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書類が片付け終わるといいタイミングでお茶が運ばれてきた。

あ…この紅茶、私のお気に入りの…さすがシェフ、わかってる。
添えられていたのは美味しそうなベリータルト。真っ赤な苺が生クリームに映えていた。




「はい、ランボくん。このケーキ、美味しいよ」

「ありがとうございます!」




いただきます、と言いながらパクリ、と食べて顔を明るくさせるランボくんに癒される。

本当に可愛いわ……私も弟が欲しかったな。可愛い弟がね。…妹でもいいかな。
兎に角兄弟っていうものがほしかった。…そうすれば、もっと違う人生を……
…ありえないわ。こんなこと、考えること自体が間違ってる。
妹がいようと何がいようと私はこの家業を継いでいたんだから。




「…翠徠さん?」

「あ、ごめんね、ぼぉっとしてた?」

「はい…あの、オレとじゃつまんないですか?」

「ふふ、そうじゃないの。ただつまらない考え事してただ」




け、と言う前に私の言葉が止まる。
ぎゅうっと抱き締められる体、甘い香りが鼻孔を擽り、突然で驚きを隠せなかった。

ランボくんに抱き締められている、なんて……

慣れていないのか少しだけ息苦しかったけど、一生懸命さは伝わってきた。




「あのっ…その、…元気、出してください」

「……?」

「翠徠さんは笑顔の方が、いいです」




哀しそうな顔なんて似合いません、と言ってくれるランボくんの背中に嬉しくてゆっくり手を回す。

本当に……マフィアにしておくには優しすぎる。
この子はいつかこの優しさのせいで自分を傷つけてしまいそうね…

こんな私に笑顔が似合う、だなんて。

骸達以外に本当の笑顔を浮かべることができない私。
…ランボくんには微笑みかけることはできるけど、どこか作り笑いのような気がしてた。
気づいているのかな…そのことに。
それでもこう言ってくれるランボくんは、



眩しいほど心が綺麗だった
(私とは、大違いね)

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