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「愛人なら腐るほどいるでしょう」

「…オレが愛してる奴は一人だ」

「……、…何で今回は女装しないといけないの?」




これは逃げだ。

…わかってたけど、今の私には話題を逸らすことしかできない。

リボーンもわかってるからかそのことには触れず、別に、と漏らした。
…ちょっと待ってよ、別に何もないのに何で私が誘われないといけないの。

理由もなしに誘うだなんて失礼じゃない?

私の心の声が聞こえたのかリボーンは私から視線を逸らした。




「いいだろ、お前を一度でもエスコートしてぇんだよ」

「我が儘よ。私はリボーンの挨拶回りに一緒に行きたくない」

「挨拶回りにはつかなくていい。言っただろ?エスコートしたいだけだって」

「…………」




この反応は絶対に私がうん、というまで諦めないっていう反応だ。
私が二回嫌、といえば大抵のことは諦めてくれる。
けど、リボーンはまだ私をパートナーとして連れて行くことを諦めてない。

どうしてこんなにこだわるのか知らないけど…面倒なことになったことには変わりない。

こうなったリボーンを諦めさせたことは一度もない。
絶対に…私が折れてしまう。…あぁもう嫌だな、本当。

なんでこんなことになったんだか。本当、面倒極まりないわ。




「あと、ツナからの命令だ。“絶対女性の格好をしてパーティーに出席すること”」

「……はぁ……わかった、わよ。ただし、愛人とか言ったらその場でぶっ飛ばすから」

「わかってる」




悔しい、…本当、悔しいわ。

綱吉の命令をここで出してくるなんて…さすが、ね。
この交渉術に感心するしかない。…コノヤロウ。満足そうな笑顔がむかつく。

思わず口が悪くなっているとリボーンがぐいっとエスプレッソを飲み干した。

そしてカップを置いたかと思えば私の前に、…片膝を跪いた、あの、リボーンが。
…私、どうしようもなく動揺してる。なんでって、珍しすぎて。

決してときめいたとかそういうのじゃない。

私を真っ黒な綺麗な瞳が私を真っ直ぐ見つめて…そっと手の甲にキスが落とされた。




「よろしくお願いします、姫」

「…よろしく」




どうして、こう、この人は、キザなことが似合うんだろう。
女の人が落ちてしまうのはこういう仕草をするからだろう。…罪な男。

私にはそういうの、いらないのに。

そう言いたかったけど結局は口に出さず、…私も女、なのかな。
ニッと口の端を上げて、そのまま何故か恋人繋ぎをされ、手を引かれる。




「どこ行くの?」

「お前に逢わせたい奴がいる。…まぁ一人は余計だが」

「は?」




行けばわかる、とリボーンは優しく微笑んで屋敷を後にする。
もちろん私の背には翡翠をのせて。この子は、半身だから。

一体誰だろう?と首を傾げつつ、リボーンの手を握りかえした。



シンデレラと王子様
(なんて、ガラじゃないけど)

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