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…仕方ない、ここはもう穏便に過ごす、なんて想わない方がいいわね。
ふ、と笑みを消していつもの無表情に近い無愛想な顔へ変化させる。
不快感も露わにして、この勘違い男を罵ろうと口を開いた。
「貴方、」
「さっそく行きましょう!」
「…!」
パシッと。あろうことか、この男は私の腕を力加減もなしに掴んだ。
女性の扱いが慣れていないのか、ぐいっと引っ張るものだから痛いも痛い。
痛っ!と言ったけど自分のことしか見えてないのか無視。
………プチン、と私の堪忍袋の緒が切れた気がした。
男が女性を無理矢理連れて行こうとするなんて……殺すわ。
もうパーティーが滅茶苦茶になるとか、そんなこと知った事じゃない。
コイツを世の中のために消し去ることが最優先だ。
ぐっと力を腕にこめて振り払おうとした瞬間、
―――バキッ!
「ぐあっ…!…っ、何すんだ!」
「……っ」
誰かの手によってその男は腕を折られたから私の腕から手が離れ、その衝撃で一、二歩よろめくと、トンッと背中に温かい何かが当たって、片腕が私を抱き締めた。
誰か、なんて……わかっている。
このどこか甘さを秘めた香水の香り……温もり、は。
「てめぇ、いい加減にしろよ」
「リボーン…」
「何だお前!一体誰だよ!?」
激昂する青年はさっきまで黙っていたのに突然口を出したリボーンを思いっきり睨む。
その様子からやっぱり彼はリボーンを知らないようだ。
リボーンは世界最強のヒットマンである自分の名前も知らない下っ端か、と嘲笑する。
その馬鹿にした態度が許せなかったのか懐からナイフを取り出してきた。
全く……お坊ちゃんかと思えば意外に物騒なもの持っていたのね。
……それに無知というものは、残酷だわ。彼に…リボーンにナイフを向けるなんて。
私が手を下さなくても彼の命はもう確実にこの時点でなくなった。
「オレは彼女と遊ぶ予定なんだよ!邪魔するなっ!」
「遊ぶ?…まさか、コイツを抱くつもりだったのか?」
リボーンの怒りを含んだ声に恐怖がやっと生まれたのか一瞬だけひるむ。
そんな様子を見ながら、私は本当に唖然としていた。
………なんて男なんだ、このお坊ちゃん。
いや…お坊ちゃんかと思っていたらただの下種だったか。
まさか私のことをそこら辺の安い女と勘違いしてたってわけ…?
…冗談じゃないわ。侮辱するにもほどがある。
純粋な振りしておきながらとんでもないこと考えてたのね。
今すぐにでも殺してやろうかしら。
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