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え、と振り向く前に聞こえた、「翠徠」という女性の高い声。
その声は誰よりも嫌いで…不快に思う、声。
私は笑顔も何も浮かべず、足をとめてゆっくりと呼んだ彼女…郁織と向き合った。
郁織はやっぱり薄いピンクと白いレースがあしらわれた派手なドレスを着て佇んでいる。
ニッコリと浮かんだ笑みはいつもより可愛く。…逆に感くぐりたくなった。
リボーンも振り向き、郁織を一瞥したが特に何も言わず。
私は警戒心を強めながら「郁織…」と呼び返した。
「ちょっといいかしら?」
「…用事なら今言ってほしいんだけど」
「ここじゃ困るの。そうね……中庭で話したいわ」
中庭といえばテラスからは見えるがその他からは見えない、人気の少ない場所。
私はいつもパーティーの時好都合とばかりに使っていた場所だけど……
この、私のことを世界で一番嫌っている郁織と一緒にいくには少し用心すべき所だ。
もちろん郁織に銃や戦闘で負ける確率は0だ。
こんな一般人と変わらない人間にこの私が負けるはず無い。…だとしたら、何故?
別に行っても支障はないはずなのに……何故、こんなにも私の中の警報が鳴り続ける?
なんだか、胸騒ぎがする。
「………」
「リボーンくん、翠徠借りてもいいでしょ?」
ついにはリボーンにまで笑って同意を求めた。…関係ないはずなのに。
関係ないからかリボーンは無表情のまま私にだけ視線を向ける。
その視線にはありありと「どうするつもりだ?」と問いかけがのせてあった。
つまりはリボーンが決めるのではなく、自分の意志に従えということ。
もちろんそのつもりだったけど……どうするって……そんなの、
「郁織、行くわ」
「…よかった。じゃあ、行きましょうか?」
ニッコリ、と再び笑みを浮かべた郁織に警報は止まらず。
どこか歪んで見えてしまったことに違和感を覚えながら中庭へと向かう。
背を向けた後…リボーンが嫌な予感を感じ、綱吉の所に行っていたことさえ、知らずに。
そしてマリオネットは動き出す。
(糸を操るのは、歪な笑みを浮かべる道化師)
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