勝利は勝ち取るもの




相互の柚李さんよりチームグラスホッパーの小説をいただきました!うちのみのり、miaさん宅の玲さん、そして柚李さん宅の鳴海さんの三人とそれぞれのお相手がわちゃわちゃするお話




迅と小南が本部に来るっていうから迎えに行ったっていうのに、相変わらず迅はふらりと何処かへ行ってしまったらしい。小南と2人きりになったおれは沙音と千世のいない隊室に戻っても仕方ないと思ってラウンジへ向かう。ラウンジなら知り合い誰かいるだろうし、小南も退屈しないだろう。

「あ、鳴海さん」
「太刀川、に玲ちゃん…っと、中津ちゃんと荒船…?なんか見ない組み合わせだな?」
「太刀川の大学の課題見てたら」
「俺と中津がここに来て一緒に勉強みたいになった」
「そういうことです!」

玉狛がどうとか、鳴海隊がどうとか他愛もない話をしながらラウンジへ向かうと珍しい組み合わせの4人組が集まっていた。ふと顔を上げた太刀川と目が合ってそちらに足を進める。思ったことをそのまま口にすれば、玲ちゃんに荒船が続いてさらに中津ちゃんが続く。中津ちゃんと荒船は良いとして太刀川お前はそれで良いのか。A級1位個人ランク1位が見せしめかのように課題してるって忍田さんこれ見たら泣くんじゃないんだろうか。

「太刀川…」
「なんだよ、小南その目は」
「あー…おれも手伝う?」
「鳴海さんありがとう。助かる」

ラウンジにいる人たちの視線をほしいままにしているA級1位サマは自分の置かれている状況がイマイチ分かってないらしい。小南の向ける視線がどういうものかは見ずに理解して、おれは玲ちゃんと荒船に視線を向けた。結構長い時間勉強を見ているみたいだったから。小南も手の空いた玲ちゃんと話せるだろうし。少しぐらいは力になれるだろう。

「あー!もう頭入んないよー!」
「大丈夫だ、俺は最初っから入ってない」
「………誇らしげに言わないでくれる?」
「あっ!」
「今度は何だよ、中津」

それからしばらくした後で中津ちゃんに限界が来たらしい。まあ確かにだいぶやってたみたいだしな。おれがそんなことを思っていると乗らなくていいそれに太刀川が乗ってくるものだから、小南と和やかに話していた玲ちゃんの視線がとんでもなく冷ややかなものになる。そんな玲ちゃんに千世と似たものを感じていると再び中津ちゃんが声を上げた。さっきとは違って、きらきらと瞳を輝かせている。対照的に荒船はじと目で彼女を見ていた。

「遊園地行きたい!みんなで!」
「!」
「お前なあ…自分の状況分かってて言ってんのか?」
「荒船の鬼!いいじゃん!減るもんじゃないし!」
「みんなで遊園地、ふふ、楽しそうね」

ぱあっと瞳を輝かせて言う中津ちゃんに、ぴくりと小南が小さく反応する。おお、行きたそうにしてる。素直じゃないわりにこういうのはわりとすぐ反応するんだよなあ、とかなんとか謎の感動を覚えた。ぎゃんぎゃんといつものように吠え合っている中津ちゃんと荒船を他所に玲ちゃんは楽しそうと綺麗に笑っている。太刀川は相変わらず何考えているのか分かんない顔してるけど。それぞれの反応にあれこれ思いを巡らせていると再び中津ちゃんが口を開いた。

「じゃあ勝負して決めようよ!」
「「………」」
「話してみろ、中津」
「…太刀川、あんたね…」

中津ちゃんの突然の一言に太刀川以外がぽかんとしていた。おれだってそうだ。そんなおれたちを太刀川の一言がさらに置いてけぼりにする。玲ちゃんと荒船が頭を抱え始めてしまった。何も言わなかったけど、おれもわりと遊園地は賛成派なんだけどな。いつも出かけても2、3人ぐらいだし、なかなか面白そうなメンツだし。とりあえずこの話の行く末を黙って見守ろうと思った。

「荒船と太刀川さん、玲さんとわたしで勝負しよう!で、わたしたちが勝ったら遊園地!」
「へえ、面白そうだな。折角だから小南と鳴海さんもどうだ?」
「はぁ!?なんであたしが!」
「だって、小南も行きたいんだろ?遊園地」
「ばっ…!」

おれと小南は混ざらなくて良いのかとちょっと安心していると太刀川がさらにぶっ込んできた。こいつ絶対勝負したいだけだろと心の中で思いつつ、小南の出方を待つために顔には愛想笑いを張り付ける。案の定小南が噛み付いてきたけど、太刀川はにやりと口元を歪めてそう言い放つ。分かりやすく顔を赤くする小南を見て、太刀川に心の中で拍手をしておいた。普段だったら絶対やらないけど、今回ばかりは何か奢ってやろう。

「男女で分けるのか?」
「俺、鳴海さんと戦いたい」
「…俺も」
「えっ、なんでおれこんなモテモテなの?」
「…気持ち悪いこと言わないでくれる?」

まあ組み込まれた以上、参加するしかないわけで。男女で分けるなら戦力に偏りがあるっていうか男3人で女子と戦うのもなあなんて聞いてみれば太刀川がそんなことを言う。まじか、とびっくりしていると荒船もらしい。思わずおどけてみせると小南が真面目に返してくるものだからおれは一気に切なくなる。小南は沙音と同じで冗談が通じない。

「じゃあ鳴海さんはこっちで小南ちゃんは太刀川たちの方かな?」
「そうですね!」
「小南いいのか?」
「…別に。鳴海のことベイルアウトさせればいいんでしょ」
「………おれお前に何かした?」

知らぬ間に玲ちゃんもやる気になっていたらしい。中津ちゃんと2人でああだこうだ作戦を立てているのを他所に小南に尋ねてみる。太刀川に巻き込まれたわけだし、あんまり納得いってないんじゃないだろうかと思っていたおれが馬鹿だった。不穏な言葉を贈られてしまう。あれか、沙音と千世に骨は拾ってくれって連絡しておかないとダメなやつかもしれない。

「チームグラスホッパー結成ですね!」
「鳴海さん、隊長よろしくお願いします!」
「おれで良ければ!よし、中津ちゃん玲ちゃん頑張ろうな」

すぐさま勉強会は終わってチームごとに作戦会議だ。さっき中津ちゃんと玲ちゃんの考えていた作戦会議におれが少し付け加えてだいたいの作戦は固まった。個人ランク1位と3位がいる時点で勝算は高いとは言えないけれどおれたちだって作戦次第で勝てなくもないだろう。中津ちゃんがチーム名なんかを命名して、玲ちゃんにチームの隊長を任され、ちょっと円陣なんかもしてみたりして。何がともあれ楽しもうじゃないか。




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