嗚呼、今日はとてつもなく落ち着かない。

朝練に名字ちゃんが見えなくて、どうしたのかと気になっていたら朝練後にスマホを見れば彼女からのLINE通知が1件。「体調悪く大事とって朝練休みます」と、いつもある絵文字やスタンプもないたった一文。無理しないでね、と送るもどの位の体調不良なのか分からないし、いつもの華やかな文面でもなくて心配になる。

授業に出ても何故か頭の片隅に名字ちゃんの事が残り、小テストで計算ミスをするという事態に陥ってる辺り俺はどうかしてると思う。いや、可愛い後輩がいつもと違うから気になるっていうのは主将として当たり前か。名字ちゃんは俺らにとって初めてのマネージャーだもんね。


「ねー岩ちゃんー」
「知らん」
「まだ何も言ってないのに酷くない?!」
「お前がわざわざ俺の教室に来てウダウダしてる時点でロクな事じゃねェ」


岩ちゃんに散々文句を言えば、なんやかんや話を聞いてくれる辺り俺に甘いと思う。岩ちゃんの前の席が空いてたのでそこに座り、あのさぁ、と俺は話を続けた。


「そんな気になるなら名字にLINEするか、教室行けばいいじゃねーか」
「それが出来たら苦労しないよ!」
「なんでだよ」
「体調どう?とか放課後練出れそう?とかLINEしたらしつこい奴だと思われるし、教室に行くと他の1年の子に絡まれて終わりそうだからヤダ」
「お前ホント面倒クセェな」
「そんなことないですぅー」
「名字の体調がどうなのか分かればいいんだな?」
「あ、うん。そうだけど」


岩ちゃんがポッケからスマホを取り出し、何か打ち始めた。何してるんだ?と思えば、テロリン♪と手に持ってたスマホが鳴った。なんだろう、と思って画面を見ればグループLINEで岩ちゃんが名字ちゃんに放課後練は出れそうなのか?と問うていた。


「やだ岩ちゃんかっこいい」
「お前が何時までもウダウダしてっからだ」
「仕方ないじゃん、名字ちゃんに嫌われたくないんだからさ!」
「安心しろ、この前セクハラした時点でお前は嫌われてる」
「そんなことないから!」


ぎゃいぎゃい岩ちゃんと言い合ってたら、テロリン♪テロリン♪と何回も連続で音が鳴る。LINEを開けばどうやらみんな名字ちゃんの事を心配してるみたいで、俺もそれに便乗して体調どうなのかと聞いてみた。ジッと画面を見るも中々既読が増えなくてやきもきしていたら、国見ちゃんからの一文に俺は更に心配する事になった。


「どうしよう岩ちゃん、名字ちゃん熱でお休みだって!」
「どうもこうもそのまんまだろうが」
「岩ちゃんは心配じゃないの?!」
「心配はしてるけど、そんな気にする事かよ」
「今のLINEで起きたりしてないかな、大丈夫かな、熱って何度くらいなんだろう、あー心配だよ!」
「うるせぇ、もう授業始まんだろうが!さっさと自分の教室に戻れ!」
「……わかったよ」


ショボくれつつもグループLINEの画面見ながら教室に入り、席に着けば最後のひとつの既読が増えた。きっとこれ名字ちゃんだ!そう思って暫くジッと画面を見ていればテロリン♪とひとつ音が鳴って、増えた文はやっぱり名字ちゃんで。熱が下がったとの報告に俺はひとつ息を吐き安心した。それも束の間、目の前が陰り何かと思って顔を上げれば教科書片手に怒ってる先生がいた。


「おい及川、もう授業始まってんだがなぁ?」
「エッ、嘘!」
「携帯没取だ、放課後取りに来い」
「先生、そこをなんとか!」










過剰な想い未だ気付かず





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