手越祐也





『ねーえー』

「なによ」

『ちょーこーはー??』

「んもー、昨日あげたじゃない!」

『あんなの作ってる最中のつまみ食いじゃん!
本命じゃない!!』


なんて子供がおもちゃをねだるよう。


「他の女の子から本命貰えばいいでしょ?!」

『〇〇からの本命が欲しいんだけど』


かと思えば急に真剣な表情。


「……べっ、別にあんたに本命あげるなんて一言も言ってない!」

『……はぁ?本命用の箱用意してたじゃん』

「……あ、あれは祐也のなんかじゃなっ…『分かった、もういい』


顔をむすっとさせて先に歩いて行ってしまった祐也。


「……やっちゃった」


幼なじみの祐也は一度怒ると手がつけられない。


「…あんた以外に男子渡す人いないわボケ……」


家隣だし、またあとでいいか。



______
____



ピンポーン__


しばらくしてから玄関の扉が開く。


『……なに?』


いつもより低い声の祐也。


「なんで怒ってるの」

『……別に』

「はい、これ」

『…なにこれ、なんでこんなに大量?』

「私と同じクラスの子たちの分。
渡しといてって頼まれたの」

『……これだけ渡しに来たの?』


なんて眉間にシワを寄せる


「そうだよ」

『なんだよ、いらねーよこんなの。』


あからさまに機嫌が悪くて


「…………はいはい、これもだよ!」


彼の胸に私のチョコを押し付けて
顔を見ずにドアを閉めた。


「…あーあ、可愛くな」


涙が一筋頬を伝って


「帰ろ帰ろ」


歩き出すと

「…ひゃっ!」


腕を引かれ抱きしめられる
感じるのは、祐也の匂い。


『……ごめん』

「な、なにっ…」


心臓がおかしいくらいバクバクしてて
音が彼に聞こえちゃいそうで。


『チョコ、んまかった』

「……え、もう食べたの」

『嬉しかったから、いっこだけ』

「…ありがと」


少しの沈黙のあと
彼が口を開く


『俺さぁ』

「なに?」

『お前のこと好きなんだよね』

「…………知ってるよ」

『俺さ、〇〇以外のチョコは受け取らないって決めてたんだよね』

「だからさっき怒ったのか」

『俺さ、お前が思ってる以上にいい男だと思うんだけど』

「充分いい男だと思ってるよ?」

『〇〇のこと幸せにできる自信あるよ』

「うっさい、何言ってんだ」


"ふふ"
なんて笑ったかと思えば


『心臓バクバクしてんじゃん?可愛い』


ってからかって笑う。


「……聞こえてたのか」

『俺のこと、好きなんでしょ?』


反転させられ、見つめられる。




「すき」


『……じゃあ』



祐也の手が私の顔を包み、指で唇をなぞる。


「なっ、…ゆう……」

『キスしてもいい?』

「拒否権ないじゃんっ……!」



"バレちゃったか"

なんてくすりと笑い


唇が重なった。



____私のファーストキスは、ほんのりチョコの味がした。













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