小山慶一郎


「……あれ、いない」


今日は、一大イベント
バレンタインデー。


「小山くんどこ行っちゃったんだろ〜……」


お昼休みにみんなに配ったんだけど、
ちょうどその時小山くんはその場にいなくって。


「今日残業あるって言ってたのに」


誰もいないオフィスでひとり
そう呟いた。


私が手に持つこの箱は
みんなとは、少し違う。


「本命だから豪華にしたのになぁ」


当日に渡せなかった悔しさに視界がぼやけてきて


「……はぁ、帰ろ。」


踵を返し顔を上げると


『……あ』

「こ、こやまくっ…」


彼は照れたように髪の毛をくしゃっとして


『なーに可愛独り言言ってたの?』


き、聞かれてたの……


「え、えと……その」

『ん、ちょーだい??』


"早く早く"
って両手をまっすぐ私に伸ばす。


「……はい、小山くんのチョコ。」

『……本命なんだよね?』

「うん。そう。」


さっきの聞かれてたんだしね


『言いたいことはありますか?』

「……告白するつもりなかったんだけど…
もうバレてるし、ね」

『俺が先に言っちゃっていいかな』

「えっ?」




『〇〇のことが好きなんです。』



"俺と付き合ってくれませんか?"

優しく両手を広げる彼の胸に



「も、もちろん……!」



思い切り飛び込んだ。


fin


*









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