増田貴久


「はぁ……」


ため息をつくと空気中に舞う白い息。
そして、私の手には

彼に渡すことのできなかった
チョコレート。


「……昨日…頑張ったんだけどなぁ…」


自分の情けなさに、じんわりと視界が歪んできて





______
____



『あれ?〇〇じゃん』

「ま、ますだく…」


突然のことにびっくりしてしまい
持ってたものを後ろに隠してしまって。


『……あーーーー、手越に?』


私の後ろを見て、切なそうに笑った。


「え?ちがっ…『ふふ、頑張ってね』


私の言葉を遮るようにそう言い残して

どこかへ行ってしまった。



____
______




「……ってかこれ!
増田くんにだし…!」


なにを勘違いしているんだろう。
手越くんのことが好きだなんて一度も言ったことないのに。


「増田くんのバカヤロー!!」


すると
ジャリ、と音が聞こえて


『だーれがバカだって?』

「……っえ?」


ゆっくりと振り向くと


「ま、すだくん……」

『なにしてんの?もう放課後じゃん』

「えーーっと…」


私の手元にあるものを見つけた彼は


『あぁ、それ。手越に渡すやつじゃ…「違うの!」


えっ?
なんて彼は私の目を見る


「あ、その……」


よし、今しかない。


「これ、ほんとはね、増田くんに…なの!

手越くんじゃない、わたしが好きなのは増田くんなの!」


俯いて
袋を持った両手を出す


下を向いているから私は彼の顔を見れないし
彼も私の顔を見れない。

よかった、泣きそうなところなんて見せられないもん


カサ、と増田くんがそれを受け取ってくれた。



『あり、がとう
俺も……〇〇が…すき、』


なんてぶっきらぼうな言葉に顔を上げると
増田くんの顔は、真っ赤っかで。


「……ほん、と?」

『…ほんとだよ?結構前から好きだったんだよ。』

「嬉しい………」

『ちょこ、ありがとう。』

「受け取ってくれて ありがとう、」

『ん、大丈夫?』


ゆっくりと近付いて 私の涙を拭ってくれた。


「あ、ごめん……」

『手越のことが好きなんだと思ってた』

「どうして?」

『だっていつも手越のこと見てたからさ』

「そんなことないよ、」

『でも今わかったかも。』

「……?」

『本当は』


"隣にいる俺をずっと見てたんだ?"
ってイタズラに笑う彼に


「……むかつく」


頬をキスをすると


『なっ……?!不意打ちは反則だろ?!』

「意地悪するからですう〜」

『ねぇ、〇〇』

「ん?………んっ!」


仕返しに唇を奪われた。


『んべ』


なんて舌を出している彼の頬もまた

真っ赤に染まっていたけれど。

*









戻る







…………………………………

閲覧数

今日:4
昨日:0
合計:7457

…………………………………
ALICE+