花言葉は
……突然だが、俺には好きな人が居る。
「どうしたのよ、天哉ちゃん。急に考え込んだりしてェ……」
いつも花のいい香りを漂わせ、薄い化粧のされた顔でニコリと微笑む“彼”に。
「い、いや、別になんでも」
「あらそォ?なら良いんだけど。最近天哉ちゃん調子悪いみたいだしネ」
「そう見えたのなら、そうなのかもしれないな。今日は早く休むとしよう」
「それがいいわよ。」
そう言うと、彼は俺の前に手を差し出した。
何をするのかと顔を近づけてその手を見つめていると、その瞬間、ぶわっと視界が赤くなった。
「うわっぷ!!」
「あはは、綺麗に顔がうずまっちゃったわネ!顔を近づけ過ぎよ、天哉ちゃん!」
ずれた眼鏡を直して赤色の正体を見れば、そこには大輪の赤いバラが何本も。
「知ってる?フラワーテラピーって言うのがあって、その中では薔薇は凄くいいのヨ。赤色は血行をよくする色で、薔薇の香りで心身が落ち着くのヨ」
「フラワーテラピー……?」
「そう、アタシの専売特許!……よかったらこれ、あげるわ。アタシの気持ちも込めてネ」
ウィンクをしながら俺に薔薇を手渡す彼に、また心臓が高鳴る。
ああ、まただ。
どうして君はそんないとも簡単に、俺を惑わすことが出来るんだ?
「アタシは天哉ちゃんのこと、心から“おもってる”もの」
それは、俺を“俺”として見ているのか、それとも友情ゆえの優しさか。
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赤い薔薇の花言葉……【熱烈な恋】【私を射止めて】【愛情】【あなたを愛します】
20170426
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