きっと何かがあったって
ヒーロー科A組の飯田 天哉と、草花 勇樹は男同士であるが恋人である·····が。
個性社会の中でもまだまだ同性間の恋愛に厳しい世間の目もあってか、堂々と外で手を繋ぐこともままならない関係でもあった。
·····まぁ、勇樹はオネェでバイ・セクシャルであるためオネェ特有の距離感で飯田のみならず周りの生徒達にもスキンシップを取っている為、多少イチャイチャした所で周りからは「またやってるよ」ぐらいにしか思われていないのではあるが。
「·····んも〜、天哉ちゃん聞いてちょうだいよォ」
「またか勇樹·····今度はなんだ?」
「アタシね、インターン先でプロヒーローに告白されちゃったのヨ」
「ッッ·····!?」
それを聞いた飯田は座っていた椅子からずり落ちそうにながら驚愕する。
しかし、勇樹は全く気付いていない様子で話を続ける。
「可愛い女性だったケド、丁寧にお断りしたワ。だってアタシには天哉ちゃんという心に決めた人がいるもの」
「そっ、それは嬉しいが·····君は本当にそれでいいのか?!」
「·····ン?何言ってるのヨ、当たり前じゃないのォ。アタシこう見えて一途なのヨ。ホイホイ恋人変えるようなビッチちゃんに見えるゥ?失礼しちゃうわネェ」
「い、いや、そういう訳じゃなくて·····」
「あ〜、分かっちゃったワ!もしかして天哉ちゃん、ヤキモチ焼いてくれたの?大丈夫よ、アタシが好きなのは天哉ちゃんだけなんだからァ!」
嬉しそうにそう言ってチュッ、と飯田に投げキッスを飛ばす勇樹。
「〜〜〜ッ!!」
それをまともに食らってしまった飯田は顔を真っ赤にして黙ってしまう。
·····その様子を見た勇樹はニコッと笑い、こう言った。
「·····ふふ、そうやってアタシのする事に照れてくれる天哉ちゃんが好きなのよ、アタシ。他の可愛い女の子だって、男の子だって、天哉ちゃんの前じゃ霞んで見えなくなっちゃうワ!」
そう言いながらパチンとウインクをする勇樹に、飯田は完全にノックアウトされてしまう。
「(·····うぅ〜〜〜!!もう!どうして彼はこんな恥ずかしげもなく歯の浮くような台詞を口にできるんだ!!)」
心の中で悶え苦しむ飯田だったが、同時にそんな事を言われても嫌味を感じない程の魅力を持った勇樹のことを愛している自分がいる事も自覚していた。
「あらやだァ、どうしたのよ天哉ちゃん?顔がトマトみたいになってるけどォ」
「誰のせいで赤くなってると思ってるんだ!」
「·····さ〜ァ、誰のせいかしらねェ?」
クスクス笑う勇樹に対して、飯田はムスッとした表情を浮かべながらも、その口元は緩んでいた。
「アタシ、赤くなった天哉ちゃんも可愛くて大好きよ」
「ッッ·····!?」
勇樹の言葉によって再び頬を紅潮させる飯田。
「(全く·····これではどちらが惚れた方なのか分からないじゃないか)」
心の中ではそんな事を思いつつも、やはり勇樹と一緒に居る事は幸せであり、どんな困難が待ち受けていようと乗り越えられる気がしてくるのであった。
ーーーーーーー
甘いてんゆうが書きたかった!
20220328
index
top