きみいろリボン

·····どこかで見覚えのある緑色のリボンが解けてさらりと流れる琉音のピンク色の髪に、出久は目を奪われた。


「·····わー!!リボンがー!!」


慌てた琉音がリボンを掴もうとするが、風に飛ばされたリボンはひらりと空に舞いあがる。


「·····!」


それを見た出久は急いで黒鞭で琉音のリボンを掴んで、自分の元へ引き寄せた。


「よかった·····取れたよ、琉音ちゃん」

「わあっ·····!!さっすがいずくん!ありがとう〜!」


出久からリボンを受け取った琉音は、嬉しそうにリボンに頬擦りして出久にお礼を言う。


「·····これね、いずくんのヒーローコスチュームと同じ色のリボンだからお気に入りだったんだ。本当にありがとう!」

「うん、どういたしまして」


無邪気に笑う琉音を見て、出久も思わず笑みを浮かべる。


「んー·····でも髪、解けちゃったよー」


そう言いながらすっと口元にリボンを咥え、鏡も見ずにささっと髪の毛を直していく様に出久はまた目を奪われていた。


「(·····可愛いなぁ)」


そんな事を考えながら微笑ましく見つめていると、視線を感じたのか琉音がこちらを見てきた。
そして、出久と目が合うと恥ずかしげに目を逸らす。

·····そうしていると、琉音はいつもの髪型に戻る。

琉音の桜色の髪に映える、自分のヒーローコスチュームと同じ緑色のリボンが揺れると、独占欲にも似た感情が出久の中で沸き起こった。


「·····ん?いずくん、どうしたの?」

「いや·····この色のリボン、本当に琉音ちゃんに似合うなって」


そう言って出久がさらりと琉音の髪を指先で触ると、琉音は嬉しそうに笑ってこう言った。


「ふふ、あのね·····この色のリボンしてると、いずくんがいつもそばに居てくれる気がするから、お気に入りなの!だから失くしたりしなくて本当に良かった!」

「·····そっか」


満面の笑顔で言う琉音の言葉に出久の顔が赤くなり、同時に胸の奥がきゅぅっと締め付けられるような感覚を覚える。


「(うぅ·····ずるいなぁ、もう)」


心から大好きな女の子からの嬉しい言葉に心底ときめいてしまう自分に呆れながらも、出久は内心とても喜んでいた。


「·····ねぇ、琉音ちゃん」

「ん?なあに、いずくん?」


首を傾げる琉音に、出久は琉音の頭をもう一度撫でて、指先でリボンに触れる。


「このリボン、僕のヒーローコスチュームと同じ緑色、だったよね?」

「うん、そうだよ?」

「·····この色のリボン着けてる琉音ちゃんは、僕だけのものって言ってるみたいでいいね」

「ふぁっ!?」


出久は優しく細めた瞳にゆらゆら燃える独占欲を隠さず、なおかつ琉音を愛おしげに見つめてそう告げる。


「·····うん、やっぱりこの色が琉音ちゃんに一番似合ってる」


そう言って琉音の耳にかかっている髪をさらりと避けて、リボンを見えやすくするとニコッと微笑む。


「〜〜〜っ!!」


それに顔を真っ赤にした琉音は、照れ隠しに出久にぎゅっと抱きつくと頬擦りをして甘え始めた。


「·····うぅ〜!!そういうこと急に言うの反則だよいずくん!!!」


ぐりぐりと額を押しつけるようにしてくる琉音に苦笑いしながら、出久は小さな体を抱きしめ返す。


「ごめんね、でも本当そうなんだもん」

「うにゃ!?」


素直な気持ちを伝えただけなのに、なぜか奇声じみた驚き方をされる。
それがなんだか可笑しくて、二人は顔を合わせて笑った。


「·····でもさ」


そう言ってから、出久は自分のヒーローコスチュームと同じ色をしたリボンを揺らす。


「こんな色じゃなくてもさ、いつでも僕は君の傍にいるよ」


そう言って出久は琉音の額にキスをした。
「ほぇ」と変な可愛らしい声を出して固まった彼女を見ながら出久は笑う。



「(——だって、僕は最高のヒーローになりたいけど、君を守るヒーローにもなりたいんだから)」



その願いを込めて、最後に唇にもついばむような優しい口づけを落とした。




――――――――――――――――――
出久のヒーローコスチュームっぽい緑を見ると反応してしまうようになってしまった。
あと余談ですが、琉音ちゃんのイラストで髪飾りや服に緑色が入るときは高確率で出久から色を抜いてます。


20220425

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