「なぁ荼毘、聞いてくれよ」
「ヤだ」
「·····俺お前のそういう所すげぇ嫌い」「あ゛?」
「荼毘、こんなとこで個性使わないで。というか、荼毘も意地悪しないで話ぐらい聞いてあげなさいよ·····」

荼毘の彼女であるあおぎが止めに入ると、荼毘は面倒くさそうに舌打ちした。

「·····いや、俺さ。最近悩んでることがあんだよ。こんなのお前らくらいにしか相談出来ねぇからさ·····」
「悩み?」



·····想は、少し前から悩んでいることがあった。

というのも·····彼は同じ敵連合に所属している渡我 被身子と年の差のある恋人同士なのだが、既に体の関係がある。

·····まぁ彼はヴィランなのでもともと普通の倫理観とか道徳観念は持ち合わせていないのだが、やはり想としては17歳の未成年に手を出しているという事実が彼に何となく罪悪感のような物を感じさせているのである。


「気にせずヤれば良いじゃねぇか」
「·····うん、荼毘に聞いた俺が間違いだった。」


その言葉に荼毘はハハッと笑って想と肩を組んでさらにこう続ける。

「なァ想、俺達はヴィランだぜ?ヒーローみたいな倫理観とか道徳観念なんて持ってる方がおかしいんだよ。」
「·····そもそも倫理観が完全にイってるお前と一緒にすんな!」
「つーか、そんな事を気にするなんて童貞かよ、お前」
「は?もう童貞じゃねーし!」

そう言いながら荼毘を睨む想だったが、その顔には怒りよりも呆れの方が強く浮かんでいた。

「·····ちゃんと避妊してンだろ?」
「当たり前だろーが。俺にもそんくらいの分別あるわ」
「なら、別に問題無いんじゃねェのか?」
「いやでもさ·····」

それでもうーんと腕を組んで悩む想に、今まで黙っていた荼毘の彼女のあおぎが声をかける。

「·····トガちゃんとの事気にしてるなら、心配しなくてもいいんじゃないかしら」
「え?」
「女の子ってのは·····ほんとに好きな人としか体を重ねたくないものよ。」
「·····そ、そうなのか?」
「えぇ、そうよ。女は少なからず愛情が無いとセックス出来ないの。あの子はあなたの事が好きだからこそ、あなたを受け入れたんじゃないかしら?」
「······そう、なのか·····?」
「別にいいじゃない、私たちはヴィランなんだから。そういう愛があったって。」
「·········」

想はその言葉を聞いて少し考え込んだ後、納得したようにこくりと小さく首肯した。
「·····それもそうだな」「ふっ、分かってくれたみたいで良かったわ。」
「あぁ、ありがとよあおぎ!·····よし、これで心置き無くヤれるぜ!!」
そう言って拳を握る想を見て、あおぎは内心溜息をつく。
(·····まったく、単純ね)しかし彼女はそれを口に出さず、「頑張りなさい」と言って彼の背中を押した。
───
「·····それで、話したいことって何ですか?」

その後、トガの部屋にて。
ベッドの上で2人並んで座りながら、想は彼女に悩みを打ち明けていた。
「あぁ·····それがさ、最近ちょっと悩んでて·····」
「なんですか?」
「··········俺達、付き合って結構経つじゃん?」
「はい、3ヶ月くらいですね。」
「········俺さ、正直まだ高校生相手に手出してるってことに罪悪感があってさ」
「········はい?」

その発言に思わず首を傾げるトガだったが、想はそのまま続けて言う。

「·····いやまぁ、ヒミコのこと好きだからそういう事は全然気にならないんだけど·····やっぱりさ、なんか悪い気がしてさ········」
「想さんはそんなこと気にしてたんですか?」「·····うん」
「私は別に気にしないですよ。だって、私が想さんの事大好きだから受け入れてるんですから」
「········」その言葉を聞いた想は、一瞬固まった後、顔を真っ赤にして俯いた。
「どうしました?」「·····いや、その·····」
「想さん、カァイイです」
「·····うるせぇ」
トガが想の頭を撫でると、彼は恥ずかしげに目を逸らす。

「·····想さんが私の事を好きでいて、愛してくれているなら、そんなの些細なことですよ」
「そうかぁ?」
「·····それに、私たちヴィランなんですよ?倫理観とか道徳観念とか、そんなもの持ってたらやってられないと思うのですけど」
「んー······確かに、そうかもな」
そう言って、想は何か吹っ切れたような顔になった。

「ヒミコは、こんな俺の事·····好きでいてくれんのかよ」「もちろん、大好きですよ」
「········そっか」

想はそう呟くと、ゆっくりと彼女を抱き寄せてトガの額にちゅっとキスをする。

「·····俺なぁ、ヒミコになら何されてもいいし、殺されてもいいし、お前が欲しがるなら血だっていくらでもやりたいと思ってる。」
「本当に?」
「大マジだよ·····こんな出来損ないの俺でも、お前がいいって言ってくれるなら、俺もお前の全部を受け入れたい。」
「·········」
「そんだけ俺はお前にぞっこんなの。だから、お前になら何されたって構わねぇし、お前が望むんだったらなんでもやる。」
「········ふふっ」
「·····なんだよ」
「いえ、嬉しいなって思って」
トガは嬉しそうな笑みを浮かべながら、想の首元に腕を回して抱きつく。
「私、今すっごく幸せ者です」
「·····そうか」
「想さん、もっとギュッてしてください」
「はいよ。」
そう答え、想はトガを更に強く抱きしめる。
「·····ねぇ、想さん·····大好きです♡」

トガは想の耳元で囁きながら、彼に体を預けるようにして倒れ込む。

「あー·····俺のヒミコはほんっとに可愛いなぁ·····」

想は蕩けた目でそう言いながら、ゆっくりトガの頭を撫でる。その様子を見て満足したのか、トガは想の腕の中で微笑んだ。
「·······ふふっ、想さん大好き」
そう言って、トガは彼の頬に唇を当てた。

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