世界は色鮮やかに
真正面に向き合ったその女は決意を秘めて――いや、その瞳に色濃く映し出し、俺を見据えていた。
優しさを持った女だった。大らかで、しかし弱くはなく、弱いものを傷つけるものに対して確かに怒ることのできる意志の強さを持っている。
優しさの意味を履き違えるわけもなく。
強さの間違いに陥ることもなく。
(そうか、お前から見て俺は過ちを犯したか)
お前のことだ。
その優しさはすべての民に向けられるべきだと思ったのだろう。――エレンピオスの全ての民にも。
生きるものに――罪はないと。
「アースト、私は貴方を正しに来たわ」
声がわずかに震えたそれは、最後までこの戦いが起こらなければいいと願ったが故にだろう。
握りしめられた拳。
そして、広げられた無数の札。
まるでそれは宙を舞う、カン=バルクの雪のように白く、儚かった。
「私は――貴方を止めるの」
赤い髪が炎のように。
蒼の瞳が空のように。
碧の瞳が大地のように。
「――来い、アレイスティル」
この戦いが避けられないものだと気付いていた。
できるなら――俺も。
(お前とは戦いたくなかった)
などと、口が裂けても言えないが。