いつか来る別れの前に
貴方との思い出が沢山欲しいです。
そういうと、貴方はいつでも不機嫌になります。
「……そりゃ、おれは海兵だ。いつ死ぬかわかりゃしねぇ。それでも、そのための思い出は作る気はねぇぞ」
はっきりといいますね。
俺の気持ちを察してほしいのですが。
「知るか。傍にいたきゃ、勝手にいりゃいい」
プロポーズしてきたのはスモーカーさんじゃないですか。
俺がそういえば、貴方はもう慣れてしまった葉巻の煙を吐き出して、ぎろりと睨みつけてくる。
「ああ、そうだ。おれがお前にプロポーズした。だから――おれはお前の傍にいるんだ」
そういうとまた、貴方の苦手な書類仕事へ戻っていく。
ふと、思い立ったように私は人の姿を捨てて竜の姿になるんです。
真っ白な毛並みにまるで狼のようなそんな姿を貴方は初めて見た時――すげぇな、と一言でした。
「……撫でろってか?」
頭を差し出して近くに寄れば、ため息混じりの声。
黙っていれば、スモーカーの大きな手が私の頭を撫でる。
「リーヴ。お前、何不安がってんだ」
不安ですとも。
「おれはここにいるだろう」
だって。
「泣くな」
人の姿に戻って、スモーカーさんの膝下に擦り寄れば、視界がぼやける。
「泣くな、リーヴ」
抱き上げられる。
「ちゃんと、お前の傍にいる」
いつかくる別れに怯える私を抱きしめてくれる貴方が私は愛おしい。