すきの二文字がこの世で一番難解


「雅ー」
 聞き慣れた幼馴染の声に振り返った。
 おはよう、と笑いかけてくる紅葉におはよう、と言いながら外靴から上履きに履き替えた。
 いつも通りの朝。
「宿題、やった?」
「あー……」
「写させてはあげませーん」
 ちゃんとがんばってください、という紅葉が俺の服の裾を掴んでくる。
 生徒も多いこの時間だがまあいいだろう、と手を繋いだ。
「ヒントはくれんだよな」
「んーー……仕方ないなぁ」
 少し悩んだ末、紅葉はそういった。
 ジュース一本ね、という紅葉にはいはい、と言いながら教室まで歩く。
 その時間があまりにも心地良い。
「……ん?」
 少し手を引いて人気のない所に連れて行く。
 朝の、この時間は人が中々通らないところだ。
 目を見開いて見上げてくる紅葉の唇を塞ぐと、紅葉が一気に顔を真赤にする。
「っ、あ、朝だよ!?」
「キスしかしねえよ」
 強気な紅葉の顔が慌てふためいて、真っ赤なのが可愛らしい。
「……っ、ま、雅のばかぁ!!」
 といいつつ、離れようとしないのが愛されていると思う。

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