そのはまばゆく


 中立国家――アヴァロンには巨大な祭壇がある。
 ザビーダは久方ぶりに戻ってきたアヴァロンの地を踏みしめながら、体を伸ばす。
 この土地だけは相変わらず、天族が見える人間ばかりで、ザビーダが歩いていると方々から声をかけられる。
 大体百年ぶりともなると、人は入れ替わっている。
 こればかりは仕方ない人と天族の寿命の差だ。

 祭壇にたどり着くと、一人の少女が槍を持って立っていた。
「誰ですか?」
「おー、お前が新しい神子様か」
 その服装には見覚えがある。
 この先で祀られている天族の器になることが許されている血族の跡取り――神子が身につける服だ。
「貴方は誰ですか!」
「ザビーダだよ。んで、お前は?」
「……ザビーダ?」
 質問を返しているというのに返答がないとは、とザビーダは今回の神子様はじゃじゃ馬そうだなぁと思いながら腰に手を当てた。
「もしかして、セメア様のおっしゃっているザビーダ様?」
「おー、母さん、俺の話ししてんのか。母さんは奥にいるか?」
「いらっしゃいますがって、ちょっと、今は、お祈りの――」
 そういいかけて少女の言葉が止まった。
 普段は中々開かない奥への扉が自動的に開いたからだ。
 ザビーダは自分よりも遥かに小さい少女の頭を撫でて笑った。
「入っていいってよ」
 そういうと、手を離して奥へと進む。


 神殿にはたくさんの光が入り込むように造られ、荘厳な雰囲気を醸し出している。
 清らかで、純粋な領域。
 何者にも穢し難いそんな、雰囲気がある。
 ザビーダはそこに一人座る、女性を見つけて微笑んだ。

「アスナ――」

 まるで愛おしいものでも呼ぶような声。
 アスナはふと振り返って笑った。
 いらっしゃい、と手招きされて、ザビーダは素直に近づくと、彼女の膝に頭をあずけて横になった。
「長い旅でしたね」
 しなやかな細い指がザビーダの頭を撫でる。
 心地よさに目を閉じて、ザビーダはおう、と答えた。
「また、話を聞かせてくれますか?」
「もちろん」
 それはうれしい、と笑うアスナにザビーダはたまらず目を細めた。

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