は雪を溶かせるか


 白い髪が氷室の前を通り過ぎた。
「……本当に白いんだね」
 月並みな感想に彼女は嫌な顔もせずに笑った。自分の真っ白な髪を弄んで指の絡ませた後、重力に逆らわせずに落として見せた。
「珍しい?」
「向こうでもそんなに白い人はいなかったかな」
 先天性白皮症。
 所謂アルビノである彼女――火炎陣アスナは兎のように赤い瞳で、氷室を見た。よく好奇な目で見られることもあるのだろう、白いといわれることにあまり嫌な気分にはなっていないようだった。
「でも、俺は好きかな」
 髪をすくい上げる。白い髪はつややかで、美しい。

「雪みたいに綺麗だ」

 見つめて一言。
「でも、俺、まだ雪見たこと無いんだけどね」
 おどけたように笑うと、アスナは大きく赤い瞳を見開いた。
 その髪にそっと唇を寄せる。
「きっと、アスナみたいにキレイなんだろうね」
 真白できれいな肌がたちまち赤くなるのが見えた。珍しいな、照れてるのか、と氷室が判断するよりも先にアスナはくるりと氷室に背中を向けてスタスタと進んでいってしまう。呼んでみるが返事はなく、後ろを向いていると言うに耳まで紅いのが見えて、氷室はくすり、と笑った。

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