遠いへ手を伸ばす


「寒いねぇ」
「ああ」
 年が明けてすぐ。すなわち現在は深夜であるが、紅葉に付き合わされて神社へと初詣へ出かけた原田は当然のように紅葉と共に初詣へとやってきた参拝客の列に巻き込まれた。まあ、想像の範囲内だったし夜明けまでに帰れたらいいほうだろう。毎年のことだから、敢えて強くいうこともなく、原田は紅葉の手を握っていた。手袋でもしてくればいいのに、手は冷たい。
「お前……手袋はどうしたんだよ」
「雅が手を温めてくれると思ったんで持ってきませんでした」
「正直か」
 コートのポケットの中に紅葉の手を突っ込んだ。もう片方の手は先程から紅葉のコートのポケットから出てきていないのでおそらくそちら側にはカイロでも仕込んであるんだろう。寒いというのなら防寒くらいしっかりしてこい、と一言言えば、雅が最大の防寒です、と笑ってくるので深くため息を付いた。

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