短篇07


都佑は笑った

己の恐怖を笑って笑い飛ばすように

震えてその場で崩れて使い物にならない様に


只々笑って皆に笑顔を見せた

それが其処に居る全員が胸を苦しめるものとも知らずに




梅雨「都佑ちゃん、あの子死ぬ気だわ・・・」

相澤「何!?蛙吹それは本当か??」

すぐに後ろを振り返る相澤
それに頷く蛙吹に相澤はくそっと舌打ちをしながら
壁になってしまっている透明のキューブをたたいた


梅雨「都佑ちゃん笑っているけど、空笑いだわ。
きっと凄く怖いのよ・・・」

お茶子「都佑ちゃん・・・」







「怖いかい?」

『ーーっ!こ、怖くなんかない!!』

「嘘だね」

そういって少年がすぐに斬りかかる
すぐに機転を聞かしてレッドが回り受け身を取った
キンキンと音を鳴らしながらも都佑を庇う

その間に都佑は次を考えていた


『(仮に一人を召喚したとしても私を
攻撃されたら全員が消えてしまう。
かといって人数を増やしてしまえば
長期決戦は無謀にも程がある・・・

只でさえこれを使うのは初めてなんだ
出来れば一人で押さえたい。
でもこいつはそんな事をさせてくれない。
・・・ごめんね、梅雨ちゃん)』


私はそう思いながら胸に
手を当ててまた一人人を召喚した


『ピンキー!レッドと合流してそのまま
武術使いながら個性発動!そのまま気を
引かせておいて!』

こくりと頷いたのを理解してすぐに
隣に置いてある光に手を置く











『・・君はまだ育てないとね。
デク!ショート!!君らはなるべく
ヴィランを攻撃、体力を奪う程度でいい!
いけ!君らに掛っているんだ!!』


そういって都佑は指示を出しながら
どんどんと友であるクラスの人間を出していく
それに尾白が凄い・・と呟いた


尾白「あんなに・・人数を増やして大丈夫なのか?」

轟「いや、大丈夫じゃないだろ。
見ろよ、岡本の額、かなり顔色悪いぞ。
あいつ無理してまで俺達を作り出して
攻撃しているんだ」

百「都佑さん・・それ以上やるのは・・・!!」


そう止めようと声を出すも都佑は一度もこちらを
クラスの人たちを見てくれはしなかった
それもそのはず、都佑は今戦闘にしか目が行っていない
そしてヘッドフォンを付けて声を遮っていたからだ

それを理解した相澤は己の不甲斐なさに
ぎりっと歯を食いしばり
血が止まらない手を握り締める

梅雨は相澤先生と言って声をかける
相澤はただひたすらに都佑を見ていた
その姿に敵わないなぁと思いながら
ケロっと言った



『ちっ、やはりただもんじゃなかったか・・・
生徒を出すのは無謀だったというわけか?』

そう言いながら都佑は舌打ちをして
光をひたすら温めながら後ろに下がる
それを見てふふふと笑う少年に
何がおかしいと言った


「君は本当に面白い事をするよね
でもね、こうすれば君は次どうやって
攻撃をしてくるかな?」


何を、そう言おうとする前に彼は、
少年はショートとデクの腹に大きな穴をあけた
それに都佑だけでなく、相澤、梅雨、轟
緑谷達も驚きで目を開いた

宙には綺麗な血の花が咲くように舞い
倒れてそのまま綺麗に消えてしまった



『・・・な、んで、そんな・・・』

「ぶっ刺せばいいのか、簡単だね」

そういって反撃と言わんばかりに攻撃を仕掛けてくる
すぐに受け身を取ろうとさせるもすぐに殺された
私は胃からこみあげてくる胃液を吐かずに耐えた


声も出ずに皆が消えていくのにはそう時間はかからなかった
私はただ見ているしかない事に只々歯がゆくて、
どうしようもない自分に腹が立った


「さぁ、生徒の具現化を全員殺してあげたよ。
と言っても君が出したのはまだ数人しかないからね
早くだしなよ、ほら、さぁ・・・・」

『ーーっ!!』


デク「ダメだ、岡本さん血になれてなくて
怯えて怯んでる・・・!!」

響香「都佑!!」


『!?!?』



響香が個性を使って都佑の
ヘッドフォンを超えて音を届ける
それに気が付いたのか都佑はすぐに
響香の方を振り向いた

響香は涙目ながらも諦めるな!と叫んだ


響香「諦めちゃ駄目だろ!私達と、
相澤先生と、梅雨ちゃんどうするの!?
ヒーロー志望なんでしょ!?あんたが
ここで怯んだら誰が救うんだよ!!

私達を救って、くれるんでしょ!都佑!!」


その声に都佑は目を開き、一瞬目を開いて
目から涙が溢れそうになった

そうだ、何を戸惑っているんだ、
血を見ただけで、それはあくまでも
その人間の形をした自分の個性じゃないか

目の前に出てくるのは私が好いてやまない
友達や先生方の形をした私の個性
そうだ、生きているんだ

死んだと思っても意味がない
うな垂れても意味が全くない

私はそう言い聞かせながら雄叫びを上げる
力が溢れてくるような感じをとりながら
隣に温めていた光を手にする



『大丈夫、大丈夫だよ!
・・・一人じゃない!私は!
1人なんかじゃない!!!』


そういって都佑は手をたたいて
両手をめいいっぱい広げて叫んだ


『イレイザー・ヘッド!奴を倒せ!!』





現れたのは担任であり父の
イレイザー・ヘッドだった

それを見た都佑以外の人間は驚いて声が出なかった


『へへ・・プロヒーローは時間がかかるんだよ!
イレイザーだけじゃないよ?プレゼントマイクや
ミッドナイト、セメントス、13号、オールマイトまでいる!
さぁ、どう出る??ヴィランよ!!』


そういって後ろに隠していた光を取り出し隣に具現化させた
左右に具現化でも先生が立っているだけで勇気が出る
目の前で殺されるのは私の不甲斐なさにもある

でも、人数を増やすだけ増やして
目くらましの間に強い人間を一人
作ることくらいしか考えられなかったのだ



「今先ほどのはあくまでも
プロヒーローを作るまでの
時間稼ぎだったというわけか!?
・・・くそ、貴様、餓鬼だからと
いってなめた真似するんじゃねーぞ!」

『へへ、ご生憎さま、君が時間を
進めてくれたおかげで大体22歳まで
時間が進んでいてね・・・ついでに
面白い情報まで思い出したんだ、よ!!』


そういって都佑は前線に出た
すぐにイレイザーの捕縛武器に
捕まり後ろに下がっている間に

オールマイトとミッドナイト
プレゼントマイクが前に出る

イレイザーはじっと都佑の隣から離れない
というよりかは



お茶子「相澤先生が都佑ちゃん守ってる?」

梅雨「今あそこにいるのは
イレイザー・ヘッドよお茶子ちゃん
こっちにいるのが相澤先生」

相澤「紛らわしい事してんじゃねーぞ・・都佑」

そう舌打ちしながらも自分が
都佑を守っていると思うと幾分かは
心が落ち着いてきた


この勝負、都佑の勝ちだ



そう誰もが思っていた










「くそ、がっ・・・!ぐあっ!!」

『セメントス、13号、ミッドナイト
下がっていいよ。ありがとう。イレイザー
捕縛お願い。』

こくりと頷いてセメントス、13号、ミッドナイトは
綺麗にその場から消えて、それと同時に
イレイザーが捕縛をして下にバンと
大きな音を立てて少年を地面にたたきつけた


すぐに悲鳴が上がるも何も言わない静かな時間に
都佑はため息交じりにもマイクとオールマイトを
消してからクリエティとイヤホン=ジャックを召喚した
直ぐにでも攻撃出来そうな人間ではなく
尋問の為に取り出したものであった


都佑はふーっと鼻息でため息をだし
膝を立てて座った
目の前にはぎろりと目を光らせた
少年がイレイザーの下敷きになっていた


「くそくそくそくそおおおおおおお」

『ヴィランよ、そこまでして何が望みだ
人質をとった人物がまさかこうも
恐ろしい個性?を持っているとも知らずに
私じゃなかったら本当に私も冷や汗垂れてたよ。
ありがとうね、って言ったでしょ?ね?』


そう目を細めて私は問いかける
ギリギリと歯ぎしりしているのに
少々怖かったが、今は人質を取られているのだ
何が何でも勝ってそして彼らの生きる道を
遮断する奴はこんな奴じゃない

そう思ったら尚更こいつを気絶させようと思いながら
私は一振りをしようとしたその時
彼は思いもよらないことを言った
「君が早く告げないと今すぐにでも蛙吹梅雨を殺す」

『な!?』

梅雨「ケロ・・!!」

「さぁ、言えるかな?
最後の警告だよ、僕を開放しなよ。」

相澤「ちっ(下衆野郎が考えそうな事だ)」


優しい君なら、この言葉を理解できるだろう?
その声に都佑は蛙吹を見る
直ぐにでも助けに行ける距離ではあるが
こいつの命令通りにしなければ
恐らく助けに行けるのは私以外居ない
仮に轟達に任せようとも邪魔をしようと思えば
こいつなら何かをしでかしそうだ

それに



『ーーーっ、分かった。イレイザー放してあげて』

梅雨「都佑ちゃん!私の事はどうでもいいから」

『どうでもよくないよ!!』

デク「岡本さん・・泣いて」

都佑は涙を浮かべて梅雨の前まで歩こうとするが
直ぐにイレイザーを殺してそのまま少年が
私を蹴りあげて梅雨の真ん前まで飛ばした


ぐぁあと唸り声をあげて崩れ倒れた都佑のそばに
近くに居た八百万と耳郎がそばに寄り牢屋みたいな
棒と棒の間から都佑の背中を揺する
意識はあるらしく、都佑はぐぐ、とうめいていた


『梅雨、ちゃん、は、私が、守るんだ・・・
例え、この命が、つきようとも・・・私が』

「僕を痛めつけておいてよくそんな事がいえるね!」

『ぐぁあああ、っ、いた、ぐっ』


響香「っ!都佑に何を!!」

百「響香さんやめて!今手を出したら・・」

「へへ、分かっているじゃん、そうだよ
今すぐ君らが手を出せば梅雨ちゃん?だっけ?
その子の命が無くなるし、その後にこいつも殺すんだ。
といっても?先に死んじゃうかもね」


ゲシゲシと腹を蹴りうめき声がか細くなるまで蹴り続けた
身体のあちこちに擦り傷が出来て痛々しい
観るにもみれないと思い八百万は目を瞑ってそらした


「嗚呼、可哀想な少女!
別世界からも恋をしても
君がhappyendを
迎えることは許されていない!!」

『・・・』

「奇しくも君が好いている人は
人質にとった人間と同じで??
ほら、哀れな異世界人よ。
早く元の世界に戻りなよ。
やっと戻れるんだよ?」


チケットはこの手にある
使うのは今じゃないのかい?

そう耳元で言われて
嫌だと否定するように
拒む様に都佑はその場で
横になりながらうずくまるように
身体を丸めて耳を塞ぐ
ヘッドフォンは飛ばされた時に
身体から離れていて、もう使えない



『(仮につかえたとしても
年齢の関係上の病気の
発作が今来てる・・!!
動こうにも立って歩く位しか出来ないし
ヘッドフォンも消えて
無くなりかけている・・・)』


まさに絶体絶命だった



「ねぇ、辛い?痛い?どんな気持ち?
ほら、早くいいなよ、こいつらにまだ
隠している事があるんだろう?なぁ」

『ぐっ・・・だれが』

「いいのかい?目の前で
君の大切なお友達が死ぬんだよ?
まぁ君が僕が前に言ったアレを
言ってくれさえすれば?
此処に居る人間の命は保障しよう」
相澤「騙されるな岡本!お前は」

『相澤さん、出る準備しておいてね』

そう言った後に都佑はすぐに立ち上がり
少年の脇腹に思いっきりこぶしを打ちつけた
それと同時に意識が軽く飛んでいるのか
キューブと牢屋が一時的に薄くなる

今か!!
そう思った相澤は身体を打ちつけて脱出する
轟達も個性を使って牢屋を壊して外に出た


直ぐに都佑の元に梅雨達が寄りかかり
男子は都佑の前に立ち守ろうとする
相澤は都佑の身体が心配ですぐに駆け寄った


相澤「おい、岡本!!岡本、返事をしろ!!
おい!っ、都佑!!頼む・・・返事をしてくれ!!」

梅雨「相澤先生・・先生!都佑ちゃんが」

『・・ん、つゆ、ちゃ、あいざわ、さ』

相澤「都佑!良かった、意識はあるな。
麗日、耳郎お前たちでそっと岡本を
ばぁさん所に連れて行ってくれるか?」

麗日「はい!」

耳郎「分かりました。都佑、ゆっくりあげるよ」

そう都佑は言われて身体に触れる前に
嫌と否定した
それに相澤はいう事を聞けと言うが
都佑は途切れ途切れに話をする

『あ、いざわ、せんせ、おてて、いたそう』

相澤「俺の心配なんかどうでもいい
お前自分がどんな傷つけられているか
分かって言ってんのか?なぁ、おい」

『私、梅雨ちゃん、なら、いいや、って
想ったけど、やっぱり、嫌だったよ』

梅雨「ケロ?都佑ちゃん?」

都佑は傷だらけの手を梅雨の方に持っていく
それに気が付いた梅雨は都佑の手をそっと取る
都佑はそれにへへへ、と空笑いをした

『私、ね、昔から、想ってた、ことあって、ね』

相澤「今いう事じゃねーだろ、ほら、早く」

『好き』

相澤「あ?」


思わずそんな声が出た相澤も自分に驚いた
都佑は嬉しそうに笑って言ったのだ
相澤に向けて、好きだと


『私、ずっと相澤さんの事、好きだったよ』

相澤「お前何を言って」

『だけど、私は貴方と結ばれちゃ駄目なの
だから梅雨ちゃんに任せるね、梅雨ちゃん
相澤さん頼んだよ、私、もう、言っちゃったから』

そう言って相澤の手の中で嬉しそうに笑う都佑に
相澤は馬鹿な事は言わなくていいからと
お茶子たちに手を渡そうとしたその時
前に居たヴィランが笑い出した


デク「何がおかしいんだ!!」

「い、いやー素直って罪だよね!!
人の命が保障されて、しかもそれが
好きな人なら尚更!!都佑、君は
本当に面白い、手に入れたかった存在だけど
・・無理だよね、だって君は」


今すぐ死ぬんだから


その言葉に相澤は目を見開く
都佑が、死ぬ?
そんなあり得るはずがない

そう思いながら都佑の顔を見る
するとつい先ほどまでの傷が
塞がっていくも、段々と顔色が悪くなってきた


相澤「都佑!おい、都佑!!
・・・貴様、都佑に一体何をした!!」

「ただ単に"好きな人に好きと言ったら
好きな人の命は守れるけど
自分の命が亡くなるよ"
って忠告してあげただけさ!
そうしてコレを言ったらいいと
急かして痛めつけたら本当に
言っちゃったもぐふっ」

轟「言いたいことはそれだけか?」

爆豪「てめぇ、岡本をどれだけ
痛めつけりゃいいんだよ。
・・もう我慢できねぇ
気絶させるまでとことん痛めつけてやんよ」
そう言って爆豪達が殴ろうとしたその時
オールマイトと警察の声が聞こえて
その場は一時的に警察に保護されることになったヴィランに
爆豪達は不甲斐ない、なんとも言えない気分で終わった


『(嗚呼、意識が遠のく
死ぬってこんな感じだったのかな
でも、まぁ好きって一生言えないと
想っていたから、今言えて良かったな)』


私はそう思いながら意識を手放した
遠くの方で両親が手を振っている気がした
私はその場所に向かってゆっくりと歩いて行った

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