無し02


菜園に誰かがいるという一年の声をきいて
すぐに駆け付けるとそこには変な服を着た
女の子が*字型で座ってきょとんとした顔で
辺りを見渡していた

忍びかと疑って警戒してみるも
全く殺気も感じないどころか綾部の罠に
まんまと引っかかってしまった

その間抜けさには流石の俺も笑って
助け出してすぐに保健室に連れて行こうとしたが
何が嫌なのか近くに来るなと言って
全く触らせてくれない。

いやいや、穴から出した時俺
お前を姫抱きして連れ出したよな?
それはいいのかよ・・・


そう思いながらも一先ず学園長先生の
元に連れ出してみると、全く知らなかった
というよりは無断侵入して何か怒られるのだろうかと
怯えてきょろきょろして落ち着きがなかった

これだけ見てみるともう忍びとはかけ離れた
どこぞの町娘かもしくはどこぞの姫様だろう。
そう思いながら俺は学園長の思い付きに
頭に手を置きながらため息をつく

いやいや学園長、こんなか弱い女の子に
何やらそうとしてんすか・・・
いや、本人は嫌そうというよりかは
私なんかがやっていいんですか?
寧ろそんな衣食住もらっちゃって
いいんですか?みたいな顔で
動揺を隠しきれていないようだが・・・

そんなことはどうでもいい
学園長が俺に紙を渡してきたのと同時に
矢羽ではないが「二人っきりにしてくれ」
という声が聞こえてきた感じがして
俺はそれに従いすぐにその場から消え去った

・・都佑さんというのか
と思い返した事は山田先生に都佑さんの名前を
聞いた時だった



山田「ふむ、なるほど・・・また学園長も変な思い付きをなされる・・・・・」

竹谷「あの、俺がすることは」

山田「ああ、今はないよ。ありがとう」



そういわれて俺は、はぁ・・と言って
すぐに土井先生とシナ先生を連れて
そのまま学園長の元に帰った

いや、決して都佑さんが気になったんじゃなくて
ただ、一つ聞いてみたいことが出たんだよな


案の定ぼーっとしながらハイハイと相槌を打つ
都佑さんに大丈夫ですかと小声をかけると
まぁ八割聞いていなかったから大丈夫と
返してきたので苦笑いで返してしまった。

いや、学園長にばれていなければいいんだがと
思っている矢先バレて苦笑いで返す
都佑さんはきょとんとしながらも
シナ先生に興味があるのか、じっと
シナ先生のお顔を見ている

・・・そんなに見ていると穴開いちゃうだろ

学園長「竹谷八左衛門お前はもういい
長屋に帰りなさい。」

竹谷「え、あ、はい・・」

ちょっと聞きたい事あったんだけどなぁ
そう思いながら引き下がろうとすると
ツンツンと左腕の忍び装束を掴んで
待ってと言った都佑さんには俺も驚いた


『何か聞きたい事あるんじゃないんですか?』

竹谷「え?」

『あ、違うならごめんなさい。
なんとなく、気になることがあったのかなー?って』

おもって・・・そう小さく言って俯いた彼女に
俺はあの、と少々大きな声で言ったことに
自分の口の前に手を当てビクッとした彼女に
すいませんと一言誤って、聞いてみる


竹谷「あの、虫とか平気なんですか?」

『え?』

竹谷「ああ、変な質問だと思いますよね・・
いやその、貴方の髪の毛や服に何匹か
委員会で飼っている虫ではないんですが
虫がひっついているので」

次の瞬間キャーと声をあげると思っていたのだが
都佑さんはなんだそんなこと?というような
顔で背の高い俺の目を見て笑った


『あはは、大丈夫大丈夫。
私虫というか爬虫類大好きなんだよねー
ほら、お行き。女の子には嫌われるだろうから
なるべく出るなら男の子のほうに行きなよー』

そういいながら都佑さんは裸足で
学園長の庭に虫を離してからすぐに
パタパタと足音を立てて帰ってきた
ちゃんと足についた土を除いてから
俺にしゃがんでと言わんばかりに
腕を引いたのですぐにそれに従い
ちょっとしゃがんでみる


『ありがとう』

竹谷「え、」

そう言って彼女はただ笑ってすぐに
学園長の元に帰って行った
数十秒は固まって俺はそこから
離れずにいてしまった



どうやらとんでもない人が忍術学園に来たらしい

そう思いながら俺はある意味初めて
優しい女性に出会ったのだった

++
学園長「両方共学園の教師じゃ
何かあればこの二人に聞いてみるとよい」

『今日からお世話になります岡本都佑と申します。
日本語とか色々おかしいところあると思いますが
以後よろしくお願いいたします』

土井「土井半助だ。一年は組の教師を担当している
困ったことがあれば小さなことでもいい。
何でも相談してきなさい」

山本「山本シナです。くのいち教室の先生をしています。
土井先生同様困ったことがあれば何でも聞いてきてね?
男の人に相談を持ち掛けにくかったりしたら頼ってきて
くれて構わないから」


そう優しく微笑んでくれた二人に私は
少し大きな返事を返してすぐにこれからの事を持ち掛ける


山本「今丁度一部屋女部屋が空いているわ
そこで暫く寝泊りしてくださるかしら
部屋に着物を持っていくからそれに着替えて頂戴ね」

『了解しました。して山本シナ先生
あの、物凄く言いにくいのですが・・』

なーに?
そういって土井先生までもどうしたのだろうと
言うような顔色でこちらを見てくる
あらやだイケメンだからこっちみないで腐りますよ。

『あの、着物の着方がわからないので教えて下さい・・・』

ある意味悲鳴があがりました





































シナ「まさか着物の着方を教わっていなかったとは」

『私が居たところでは着物着ていませんでしたから』

一応学園長には全てを話してシナ先生方や生徒には
日本生まれ海外育ちのつい数日前に帰国してきた
いわゆる帰国少女という形で収まった。
そうしたら服の着方とか覚えていないどころじゃないからね。

そんでもって学園長の友人の子供という設定付き
それなら忍者という概念すらもないからね。
というか私そんなに曲者にみえます?


シナ「よし、これが一応基本の着方よ。
小袖とかになるとまた別なんだけど、
小袖を着るときになったらまた教えてあげるわ」

『ありがとうございます』

シナ「それにしても意外だったわ
あの学園長のご友人にこんな可愛らしい
娘さんがいたとは」

『私も父上におつかいを頼まれていた場所が
まさか目と鼻の先だっただなんて・・・
もう少し頑張ればよかった。』

シナ「あそこからは少し距離がありますからね
仕方がないわ」

いやかなり距離ありますよ先生一キロはあるって
元陸上部の私が言うんです。
まぁ走る位どうってことないんですけどね、
ある程度の範囲なら・・そう、ある程度なら。


『着物に布団に、何から何までもうありがたいことです』

シナ「こっちにはどれくらいいるつもりなの?」

『もう私は大体日本に住む予定です。
というか父がちょっとは故郷で夫の一人や
二人連れてこいと言い出してですね・・・』

シナ「ほほほ、花嫁修業って処ね」

『まったくもってその通りです。
・・くそ、あの人学園長先生にこの事を
全部言ってやがったのかくそ』

シナ「こら、くそとか女の子が言ってはいけませんよ」

でも、と言うと何かどす黒いオーラが見え隠れしたので
私はそれ以上何も言えませんでしたまる
とりあえずなんとか誤魔化せたのが良かった良かった。
うんうん。よしよしこのままどんどん騙していこう(おい

そう自分に突っ込みを入れてすぐに
戸を開けるシナ先生に私は背筋がなぜか伸びた
うーん、多分場が変わるというかうん
この話はしなくてもいい気がする

シナ「ではそこにいる土井先生にバトンタッチしますね」

がらりと開けて気を引き締めた私の姿に
楽にしてと土井先生に言われました。
解せぬ解せぬぞ土井半助ぇ・・・

土井「ではシナ先生」

シナ「ええ、失礼のないようにね岡本さん」

『善処します』

土井「(そこはハイと言えないのか・・・)
じゃ、行こうか」

『はい』

























































土井「そんで此処が食堂。途中で申し訳ないけど
もう人も少ないだろうしご飯を食べていこう。」

『え、あのお金は』

土井「ああ、給料から差し引かれると思うから
気にしないでAかBのランチをおばちゃんに言って
ちなみに今日がこのランチ」

そう丁寧に説明してくれる土井先生に
私は失礼のないように真面目にというか
学生の気分を久しぶりに味わいながら
ちょっとこれからの事が楽しみになりつつあった

土井「おばちゃん」

「あら?そちらの子は」

まだ人が少ない分挨拶しやすい
私は軽く息を吸って初めましてと挨拶をする

『は、初めまして!岡本都佑と申します。
今日から忍術学園の事務員として雇われました
よろしくお願いします!』

土井「(うん、この子が初めに
日本語がおかしくなるって言っていた事、
なんかわかった気がする・・・
テンパると日本語の文章が
前後逆になったりするんだね・・・)」

そうなんとなく察していると
いいよーそれよりランチどうするかと
聞いてきたのに嬉しそうにBランチと
手を挙げて言った姿に土井先生とおばちゃんは
くすりと笑ってその様子を見ていた

『それにしても人が少ないとはいえ
やはり目線が気になりますです』

土井「人が一番多いときは席がないからね」

『わーお、やっべーなおい・・・うっま!?』

土井「おばちゃんのランチ旨いか?」

そう聞かれて私は嬉しそうだなーと思いながら
少しほっとしてはいと返事をしたら
いい返事だと返してくれた。

うん、笑顔の先生は素敵で安心するから
そのままでいてほしいんだよね。

土井「・・・・ね、ねぇ岡本君?」

『ん?なんですか?そんなことより
私の苗字言いにくいでしょうし名前で
呼んでくれていいですよ。
別に呼び捨てでも構いませんし』

先生なら呼び捨て苗字でもどっちでも。
そう思いながらカチャカチャ音をたてて
ご飯をかきこんでいたことを思い出した。
土井先生が注意したのはそのことだったので
嗚呼、やらかしたーと思った。

土井「いつもそんな感じで食べていたの?」

『え?嗚呼ーはい。母は幼い頃に何処かに行ったっきり
帰ってきませんでしたし、今まで父上と一緒に
いた分男交じりの性格になったんだと・・・』

そういうと嗚呼成程と納得された。
うんうん、誤魔化していなくもないね
半分本当だしていうかこれずっと続けれるか
心配で仕方がないんだけど

というか転生じゃない分確実に天女コースじゃないの?
あれ?夢小説ってどういうのだったっけ
とりあえず帰ってから気になるから思い出そう。
声に出していうのも書くのも怖いから頭の中でだな。

そうこれまでの事とこれから考えることを考えながら
ご飯を食べ進める。なんか土井先生がご飯の進む量が
おかしいとか言っているんだが、気のせいだろう。
私もおなか空いていたのだ。とりあえず全部完食して
そのまま今日は部屋に返された

どうやら続きは明日別の人に聞いてとのこと。
どうせ部屋に来るのだろう。うん、なんとなくそんな気がする

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