ファーストコンタクト

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どうしたら、この飛鳥先輩と自然に出会えるだろう。
どうしたら、普通に話せるんだろう。

どうしたら、印象付けられる?

悶々と色々想像するも、行動に移すことはできずに一日一日と過ぎていく。
意外に俺ってヘタレだったのかもしれない。

一日一日と、まるでストーカーのように先輩を見つめるだけの日々が過ぎ去る。
ついには、見つめるだけの思うだけの日々にこらえきれなくなって、俺は図書館にいた先輩に声をかけた。


「木下飛鳥先輩?」

俺の声に、キョトン、と目を見張る先輩。
間近でみた先輩は、今まで見た中でも人一倍可愛かった。
俺を不思議そうに見つめる先輩は、まるで何も知らない無垢な小動物のようだ。


「あの…」

見ず知らずの俺に声をかけられて、戸惑う先輩

「…ああ、すいません、木下先輩ですよね?名札にそうかかれていたので、」

動揺しているのを悟られまいと早口で捲し立てながら、先輩の名札を指差す。

「違いますか?」
「あの、確かに木下は僕ですけど、」
「木下、飛鳥さん、ですか」
「あ、はい…、あの、でもなぜ…」

何故、名前を?
先輩の顔は口には出さずとも、困惑の色が見て取れた。
思っていることが顔に出る素直な人なんだ。
想像していた通りだった。

「これです…」

カウンターにあった本を取って、中を開く。
背表紙には図書カードを入れる小袋があって、中には図書カードが入っている。

そこには、先輩の名前が書かれたものカードがあった。

「あ…」
「俺が読む本、大体貴方の名前が入っていたから…気になっていたんです。
どんな人が、こんな本読むのかなって。マイナーな本も読んでいたから…。余計。っといっても、ホラーはよんでなかったみたいですけどね…。
2年B組、木下飛鳥先輩」

そういって、先輩に笑いかける。ふわっと自然に出てきた笑み。

なんでかな。どうして、先輩の前ではこんなに笑いたくなるんだろう。
ほんわかとした先輩のオーラのせいだろうか。
見つめている時からそうだった。
先輩を見ていると、ギスギスした気分がなくなって、つい微笑みたくなる。


特別可愛い容姿をしているわけでもない。穂積のように男なのに中性的な美人でもないのに。
どうして、こうも先輩を見ると心が温まるんだろうか。
胸が温まって、自然に笑みが浮かんでしまうんだろう。


「俺、富山朔夜(とみやまさくや)っていいます。いきなり不躾ですいません。
ずっと、このカードに書かれた名前の人が気になっていたんです、ずっと探していて、見つけたいな…なんて思っていたんですよ」

ニコリ、と微笑む。

変に思われていないだろうか。内心、心臓がバクバクして、手汗が出ている。
こんなに緊張しているの、久しぶりかもしれない。

先輩は微笑んだ俺の顔を、どこか呆然としたように見つめていた。

「…先輩?」
「…すいません、あの…君の笑顔が素敵で、凄く好きで…、って僕はなにを…」

真っ赤になりながら、あわあわとパニックに陥る先輩。

あのね…と繰り返す先輩を見下ろしながら、俺はにやついた笑みを浮かべ、それが悟られないように口元に手を当てた。

…今絶対俺変な顔してる。
先輩がいけないんだ。
俺のこと、すごく好き、だなんていうから。


「先輩って可愛いですね、」
「え?」
「可愛いです」

俺の言葉に赤かった顔を更に赤面し、俯く先輩

ああ、もう、ほんと、可愛い。間近で見たら、もっと可愛い。

キョトンとしている先輩を、衝動的に抱きしめなかった俺を褒めて欲しい。

俺は理性を総動員して、先輩に笑いかけた。

 

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