「先輩…これ、どういうことですか…?」


寒々とした気持ちで、先輩を空き部屋に連れていき尋問した。

先輩は携帯でとった写真を見て、さっと顔を青ざめた。
やはり、孝介から貰った写真は本物だったのか。
できれば違うといいと祈っていたのに。
その反応は、写真の中の人物が先輩だと自ら証明するものだった。



「これ、先輩ですよね…」
「…っ!」

先輩は俺の問いに大きく身体を揺らした。
顔面蒼白。

まさに秘密がばれた罪人のように、先輩は身体を震わせていた。
俺がこうやって尋問するまで先輩はこのことを秘密にするつもりだったんだろうか。



「それ…は…」

「なにが…なにが、あったんですか。
先輩は、先輩に…」

どうして、俺以外の人に抱かれたの?
先輩は孝介が言うように、俺じゃない誰かに抱かれたかったの?

俺との間に愛なんかなかったの?

あんなに笑い合っていたのに、あの日々は偽りだったの?

「ぼく…は…」

「これ、俺の友達が回してきたんです。
先輩が誘ってきたから、って。お前は騙されているって。

先輩は、本当は淫乱で、誰にでも抱かれるようなやつだって」

「そんな…」

「先輩は、あいつを誘ったんですか…?」

違うって言ってくれ。
お願いだから、違うって言ってくれ。
ちゃんとわけがあるんでしょう。
理由があって、他の男に抱かれてしまったんでしょう。

俺は聞くから、ちゃんと、聞くから。
だから・・・。
お願いだから。

俺に、何か言ってくれ。


「先輩は、あいつがいうように誰でも誘う、淫乱なんですか…」
「僕は…」


先輩は、戸惑ったように視線を宙にやりながら、


「僕は…淫乱なんかじゃ…」

か細く呟く。


写真の中の先輩は、涙を流しながらとても妖艶に誘うような娼婦の顔をしていた。

俺が見たことないような、さそう女のような艶めいた表情。

俺には見せてくれない表情。
俺は、まだ先輩を抱いたことがなかった。
だから、こんな表情、見たことがなかった。


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百万回の愛してるを君に