そういうイベント
さて。ひょんなことから私は、白石君の家にお泊りすることとになった。
そのひょんなことが実にアホな話なのだが……
私の両親は共働きだ。
お父さんは基本、21時まで帰ってこない。
お母さんは大体16時から17時には帰ってくるけれど、仕事柄、帰る時間が遅くなったりしてしまう。
お父さんと同じような時間に帰宅する事も時たまあった。
この日はたまたまお母さんの帰りが遅い日だったので、当然、私が帰宅する時間、家の中には誰も居ない。
そんな日に限って、私は家の鍵を家に置き忘れてしまったのだ。愚かだ。
もし白石君とこの友香里ちゃんみたいな可愛い妹がいれば、きっとこんな事には…
「お姉ちゃんまた鍵忘れたん!?しゃあないな〜」って呆れ顔で家のドアを開けてくれて
「名前ちゃん、友香里が服貸したるって」
「へいっ?」
妹のいる生活を妄想していたところ、部屋のドアが開いて、白石君が入ってきた。
妄想に思いを駆け巡らせていたおかげで、めっちゃ変な返事をしてしまったじゃないか…
焼き鳥屋のおっちゃんみたいな返事をした私に対してか、白石君は若干クスクス笑いながら隣に腰を落として、片手に持っていた服を私に差し出した。
「風呂入ったら、これ着てな。」
「これ…友香里ちゃんの?」
「せやで。名前ちゃんにやったらええよ〜って、生意気に言うとったわ」
「友香里ちゃん…!ありがとうー!」
受け取った友香里ちゃんの服を胸に抱きしめながら、天井に向かってお礼を言った。
天井に向かって言ったのは、何も私が頭おかしいからというわけではなくて…
今この家には、友香里ちゃんが居ない。
今日はお友達の家にお泊りに行っているそうなので、白石君には電話で友香里ちゃんに許可をもらってくれていた。
友香里ちゃんの可愛らしい服を広げながら、自分の体に合わせてみた。
「あっ…うーん、友香里ちゃんの入るかな」
「入るやろ?名前ちゃん、友香里よりよっぽど小柄やんか」
「そんな無責任な事言って。これで入らんかったら大変恥ずかしいやつよ?」
「でもほんまに細いで?名前ちゃん」
「そう…じゃあ、入らんかったら帰ろ」
「えっ、まっ、なんで?」
ここまで持ち上げといていざ入らなかった時、私はどんな顔をすればいいんだ。
恥ずかしさのあまり逃げ帰りたくなるわ。
一目散よ。
お母さんも今日一日帰ってこない訳じゃない、お父さんと同じ時間帯になるだけで、今の時間なら2人とも帰宅している頃だ。
本来ならこうして私を家に泊めることないのに、親切な白石君はせっかくだからと泊まることを勧めてくれた。
そもそも、白石君に助けを求めた私が悪いんだけど…それは
「そんなんやったら、俺のやつ着るか?」
「白石君の?」
「友香里のも余裕で入る思うけど、帰ってほしないから…俺」
伏し目がちの白石君は寂しそうに、だけどちょっと恥ずかしそうに言った。
お泊りという破廉恥展開から、既におわかりいただけていただろうか?
そう、お付き合いしている!クラスの女子どころか他のクラス、1、2年生、いや全人類から反感を買うであろう事実だと思うよつくづく!
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わらびもち