率先して報告したい人 

「うおっ!何やってんだお前…ったく。」


いつも通りの部活後、さあ帰ろってロッカー閉じたら慈郎が突っ立ってやがった。
なんでロッカー開いたとこのそんな、後ろに立ってんだよ。ホラー映画でよく見る演出だったぞ今のは。

汗でしめったタオルやらシャツをぐるぐる巻きにしてバッグに詰め込んでると、ふと慈郎の靴のつま先が目に入った。
つま先は、なにやら嬉しそうにリズムを刻んでいる。てかなんで留まってんだ?


「…なんだよジロー。帰らねぇのか?」

「一緒に帰ろっかなと思って!」


あ。そういえば既に制服だな、慈郎のやつ。

いつもは居眠りしてる慈郎を叩き起こしてせっかくだから一緒に帰る、みたいな感じなんだが。珍しいこともあるもんだな。


「いいけどよ。なんだ、どっか寄りたいとこでもあんのか?」

「うーん。商店街でぶらつかない?」

「ぶらつく?あ〜…そうだな。いいぜ別に。」


都大会も近いし自主練しに行きたいところだが、最近の慈郎はちゃんと部活に出てるからな。居眠りしてるとこもあんま見かけてなかったし、まぁなんだ…頑張ったご褒美っつーか。

なんか俺まで慈郎に甘くなってきてる気がする。名前のこと言えねぇ。

ともかく今日は大丈夫な日だ。ぶらつくっても夜遅くまで商店街を練り歩くわけじゃない。帰ってからでも自主練に向かえる。
つか家から近場ってのもあるから大して見るとこねーな商店街。そこそこ歩けばマックくらいはあるが。

重くなったバッグを肩にかけながら『行くか』と呟くと、慈郎は小走りになって部室のドアを開けに行った。


「自動ドア〜」

「はっ。お前今日ゴキゲンじゃねーか?」

「へへへっ!なんででしょう!」

「俺が知るかよ。なんかあったか?」

「あとでわかるよ!」


なんだそれ。商店街にイイモン売ってたとか?
部室に残る連中に向かって『お疲れ』と声をかけた俺は、慈郎と共に商店街へ向かった。

-2-

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わらびもち

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