ラケットパワー!…OFF 

「たーかーさーんー!」


放課後。練習を終え、部室に入ろうとした直前に名前を呼ばれた。

この元気な声の主は名前ちゃん。
普段は学校が終わったらすぐに帰ってしまう彼女だけど、今日は委員会の仕事で遅くなるとメールで聞いていて、そのメールで一緒に帰る約束もしていた。

こういう事がない限り一緒に帰れるタイミングが合わないから、この機会を逃すわけにいかないよね!


「着替えてくるから、ちょっとだけ待ってて!」

「うっす!」


部室に駆け込んで大急ぎで制服に着替えていると、隣で着替えていた桃が不思議そうに言った。


「どうしたんすか?そんなに慌てて」

「ちょっとね!人を待たせてるんだ」

「だからってそんな急ぐ事ないんじゃないすか?」

「い、いや、あんまり待たせるのは良くないしさ!うん!」


一番最後のシャツのボタンを締めて、バッグを肩に掛けた。
確かにこんなに急ぐ事ないかもしれないけど、気持ちが急かしてくるんだ。
久々に名前ちゃんと帰れるんだぞ!河村隆!って!


──桃が訝しげに思う中、部室を出て行ったタカさんとすれ違った不二さんが、一言付け足した。


「名前ちゃんだよ」

「あー!なるほどっす」



部室を出ると、名前ちゃんが見当たらなかった。
も、もしかして置いてかれたの!?
忙しなく周りをキョロキョロしていると、開いたドアの後ろから名前ちゃんが飛び出てきた。


マンボッ!

ウオアアア!?


悲鳴を上げたのは俺…ではなく、偶然部室に入ろうとしていた海堂。
急に飛び出してきた名前ちゃんに驚いた海堂は、ものすごい速さで校庭を駆け抜けて行ってしまった。


「あちゃー!タカさん驚かすつもりが海堂くん驚かしちゃったや!」

「はは…海堂は驚きやすいから…」

「明日謝っときます!さあさ、帰りましょー!」


そう言って名前ちゃんは俺の腕を引っ張った。
名前ちゃんは海堂と同じクラスだから、明日の教室で謝るつもりだろう。
海堂が羨ましいなぁ、教室でも名前ちゃんと会えるんだもん…

校門を出ると、名前ちゃんが俺の服の袖を掴んだ。


「タカさん、寄り道しましょ!」

「寄り道?……うん、そうしよう」


少し考えてから、寄り道に賛成した。
まず俺ん家と名前ちゃん家は、校門を出て反対方向側、つまり一緒に帰る約束をしても必然的に校門前で別れる事になってしまう。
こんなの遠回りするか寄り道でもしなきゃ、やってられないよ……


「ほんと、同棲してたらバイバイしなくて済むのにな〜チクショウめ!」


名前ちゃんが何気なく呟いた言葉に、顔が熱くなった。
同棲とか、そういう単語は中学生の俺たちには早いというか、いや、冗談だってわかってるけど、そういう事言われるとたまったもんじゃないというか!

一人で慌てふためいていると、名前ちゃんが俺の手を握った。


「言っときますけど、冗談じゃないですよ!リアルガチ!」

「は、恥ずかしいからやめてよ名前ちゃん…」

「大丈夫ですよ〜お風呂上がりに素っ裸でウロつくなんて事しませんって〜!タカさんの前では!」

「そういう事じゃなくってだね!?」


名前ちゃん、お風呂上がりは何も着ないで家ウロついたりするんだ…ちょっと見てみたい気も……
ってなに破廉恥な事考えてるんだ俺はっ!

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わらびもち

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