不幸中の幸いの幸い 

保健室にて、閉め切ったカーテンの中。

水を含んで冷たくなっていた制服を脱いだ私は、タオルに包まりながらベッドに座っていた。

着替えるまで濡れたままの服を着ているより、素っ裸になってタオルに包まってた方がマシだと保健室の先生に言われたもので。

今は樺地君が私の体操着を取りに行ってくれている。
すごくありがたい、ありがたいよ。


「はい、これでよし!」

「ありがとうございます!」


クレンジングシートで崩れ放題になったお化粧を徹底的に拭きとってくれた先生に、頭を下げた。

これで私の顔は綺麗サッパリ!先生自前のクレンジングシートのおかげだ!

マスカラやファンデーションがべったりついたシートをゴミ箱に捨てながら、先生は私の顔を見て気の毒そうな顔で言った。


「それにしても、本当にひどい有様ね…こんなに濡れて…跡部君がなにか関係してたり?」

「いやいや!いや…これは」

「こいつが濡れたのは俺のせいですよ、先生。」

「あらま!」


カーテン越しに跡部さんの声が聞こえた。
先生とは女同士だからいいけど、流石にすっぽんぽんでタオル1枚の姿を見られるわけにはいかない。

たしかに、水をかけたのは紛れもない跡部さんだけど、私はそのおかげで助かった。
でもこれをどう弁解したらいいか。


「そのほっぺの事は」

これは違うますへんで!!

「あらやだっごめんなさい!」


いきなり私が目ひん剥いて大迫力で否定してしまったものだから、驚いた先生がとっさに謝ってしまった。

まだ『そのほっぺの事は』って言っただけで跡部さんのせいにされた訳じゃないのに、この早っとちりが!なんか変な言葉になったし!ちょっと落ち着いて!!

聞けば「そのほっぺの事は聞かないでおくわね」と言いたかったそうだ。ほんっと早っとちりだよ。

怒鳴ってしまったことにペコペコ頭を下げると、先生はカカカと愉快に笑いながら手を振った。


「とりあえず化粧も落とせた事だし、怪我の手当てしましょうか!」

「…お願いします……」

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わらびもち

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