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「君、ポアロの常連だったのか」
「ポアロ…?」
「米花町にある喫茶店だよ。上に毛利探偵事務所のある」
「ああ、あそこ。うん、時々ね」
「あそこでピアス落としただろう、桜の」
「え?ああ、あれ、そんなとこにあったんだ。どこかで落としちゃって、諦めてたの」
「そこのウエイトレスの子が、君と話してみたいんだってさ」
「へー、あの可愛らしい女の子だよね」
「うん」
「なんだろうな」
「さあ。でも少し前から君が来なくなった、ってしょげてたよ」
「そうなんだ、店員さんに覚えてもらえるってなんだか嬉しいな」
「君は覚えやすい方だよ。気に入った物をひたすら頼むだろう」
「来たら良いよ、僕に気遣う必要はない」
「…良いの?」
「良いよ、ただ初対面の振りをしてくれたらそれで」
「うん。じゃあまた今度、行ってみようかな」
「そうしなよ。ケーキでもご馳走するからさ」
「なんか…変なの」
「そうかな」


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