052 神を恨んだ日
遠い空を見上げては、いつも思いを馳せていた。
あの空のように輝きたいと、あの太陽のように照らしたいと、そんな自由な世界を夢見ていた。しかし自分がそれを叶えることができないのを、知っていた。自分の存在が、すべてを揺るがしてしまう。ならば自分は消えるべきなのだろうか。ここから消えてしまえば、自分は空へ還るのだろう。そうして、あの空の上から、今度は陸地を見るのだ。しかし、それは、叶いもしない願いなのだ。それならば、せめて、何かのためになろう。誰かの役に立って、そうして、誰かの心に自分を刻めばそれだけで十分なのだろう。
「これ…が…?」
「ええ…エテモンが僕たちの居場所を知るためのネットワークに違いありません!」
少し山になっている砂漠の上、無数のケーブルが連なった最終地点ともいえる場所に、子供たちはいた。パソコンを開いた光子郎は、自分の特技が生かされて少し嬉しそうに頬を緩ませていた。堂々と断言したのはいいが、それでは今ここにいるということがエテモンにバレているのではないだろうか。先ず丈があたふたとあわて始めた。
「僕たちがここでこうしているのも探知されているんじゃないか!早く逃げなきゃ!」
「そ、そうよ、逃げましょう!」
つられたのはミミだけだったが、それに大人な対応をしたのは空とヤマトだった。二人を落ち着かせて、光子郎の方へと視線を向ける。ぷち、と自分のパソコンのUSBをエテモンのネットワークへとつなげる。栞はパソコン画面を覗き込み、目を大きく見開いた。
「それ…」
「ええ、エテモンのネットワークの情報です!他にも何かつかめるかもしれない…」
「ねえねえ、光子郎さん。このマークはなに?」
タケルが画面の左上を指差すと、光子郎は目をぱちりと瞬かせた。
「メールですね…」
「まさか敵からじゃ…!?」
「開けてみろよ、光子郎」
押せ押せ態度の太一の言うとおり、光子郎はメールを開いた。栞の目に飛び込んできたのは、大きく装飾されている『たすけて!』という文字だった。他の子供たちも驚いたようにごくりと生唾を飲み込んだ。
「『助けて…』?…いったい、どういう、」
「内容を読んでみヨウ」
「…ええと、何々?『私を助けてくれたら、紋章のありかを教えよう』…?」
「紋章だって!?」
「何者なんだ…一体…」
今まで見つけた紋章は全部で5つ。栞の分があるのかは分からないが、あるとしたら残りはあと3つとなる。今まで紋章を見つけるのにどれほど苦労したのか。それがそんなに簡単に見つかるだろうか。子供たちの中に疑いが芽生える。
とりあえずやるべきことはやったので、その場を離れた子供たちは、丸くなってどうするか考えていた。
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