「また同じクラスだな、榛名!」


一際大きな声と輝かしい笑顔が教室の中から響き溢れて、私は思わずそっと扉を閉め、10秒程深呼吸を繰り返した。もちろん彼と同じクラスであることはクラス発表の時点でわかりきっていたことだし、最近では彼のファンクラブの人も私という存在を大目に見てくれているらしく、むしろ暖かい眼差しを送ってくださる。ああ、またやってんだな、ってそういう目線で見られる。正直、それも結構つらい。彼と同じクラスになるのは高校に入って三度目。そう、三年間同じクラス。神様は意地悪である。それでなくても毎日部活というもので顔を突き合わせているというのに更に追い打ちをかけ教室ですら彼に振り回されなければいけないのか。あえて言おう。別に嫌いっていうわけではない。むしろ色んな意味をふまえれば尊敬に値する人物である。最初はほんとひきこもりたくなるくらい嫌だった引きずりこまれた部活も、今ではそこまで苦ではないし、まあユキいるし、色んな人に出会えたし、色んなところを鍛えられたという面ではプラスとして考えられる。だから決して嫌いじゃないよ。あの無駄なテンションに、ついていくのがたまらなくしんどいだけだ。思わずガッデムと顔を両手で覆った。


「待て待て、榛名、どうして閉めるんだ?また俺と一緒のクラスだったのが嬉しくて悶絶していたのか?そうなのだな?」
「ちげーよ!逆だよ!」


思わずそう叫んでしまった。スパン、と扉が開いて、風が吹き寄せる。両手で覆っていたはずなのに、その両手は彼によってどかされ、どこか嬉しそうに笑っている東堂くんとご対面だ。通りすがりのクラスメイトに、相変わらずこの凸凹コンビは仲がいいななんて言われて、げっそりした。


「うむ、どうしたんだね?疲れが顔ににじみ出て、貧相な顔が更に貧相になっているぞ!」
「誰のせいだと思ってんだよコノヤロウ」
「ほら笑うがいい、お前には笑顔の方がよく似合う」


まさにアメとムチ。からの東堂スマイル。思わずため息がもれ、その後、笑いが漏れた。
別に嫌いじゃない。ただ、いっしょにいたら、ちょっと疲れるだけで。


「相変わらず朝から無駄に元気で羨ましいよ、東堂くん」
「今日は特別にな!またおまえと同じクラスになれて俺はうれしいのだよ」
「ありがたくない」
「榛名もそう思っているだろう?」
「人の話を聞いてよ!どっちかっていうと福富くんと同じクラスがよかった!!」
「なに!!?」

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