赤髪の白雪姫 魔法少女ネタ(知識無)

「ただいま。遅くなってごめん…しらゆきー?」

薬草を取りに3日家を空けて居たなまえは踏み荒らされた部屋に、机に広がっている手紙類を見て目を見開いた。

「なに、これ…。…白雪?いないの?」

気配を探ってみても人気はゼロ。
呆然と薬棚を眺めれば隠すように"なまえへ。"と書かれた封が目に入りそっと手に取る。


親愛なる親友へ

突然居なくなってごめんなさい。

あなたにはきちんと話しておきたかったけれど時間もないため手紙で申し訳なく思います。

この国の第一皇子である、ラジ王子に愛妾となれと言われ、わたしはこの国から出ていくことを決めました。

一緒にお店をやれて楽しかった。本当にありがとう。わたしのことは探さないで。気にせず、なまえは貴方が探している道を歩んでください。またどこかで会えることを祈って。

白雪』

「―――――あのっ、馬鹿!」

普段あまり声を荒げることのないなまえが、怒りのあまりその手紙を握りつぶした。

「ただ薬草に詳しくて処方薬を作れるからって国から姿を眩ませられるわけないじゃないか!」

匿って欲しいなら、わたしの帰りを待っていてよ…
今なら、今の私なら、あなたを守ることができるのに……


なまえはキラリと光る自分の相棒に声をかける

「ルーク、此処を出るよ。」
<<オーライ。…珍しいですね。彼女を追うのですか?>>
「……18の町娘が、国相手に追われる立場になるなんてことが目の前で起こって、それが恩人まして私の親友なら尚更…黙っていられないよ」

なまえの言葉にルークは3度短く光を放った。

そうと決まれば日が昇る前に彼女を追うための準備をする。準備といっても、万全に動けるようになったなまえの念能力であればその必要も最低限ですむ。隠宅"リトリート"を発動すればなまえの隠れ家に繋がるため、その空間は2LDKの広さをもち、拡張機能付きで念のないこの世界では最高の隠れ家である。そのため15分もせず店から立つことができた。

「あの土足で踏み荒らされた状態、城の騎士がきたんだ。探さなきゃ…嫌な予感がする」私が白雪の家を空けたのは3日。もし、出かけた初日にこの手紙が作成されたのであれば…。胸中不安を隠せないまま、日が昇る前のきれいな空気の中なまえは森をかけていた。

白雪は魔力がないためサーチで特定するには効力が薄い。なまえは円を広げ気配をたどる。完全に知らない人を名前だけというわけではない。白雪の気配ならば長いあいだ側に居たのだからなまえは白雪の気配を掠めるだけでも見つける自信があった。

「この近辺にはいない、か」

なまえは悔しそうに呟いた。この町、というよりこの国に居ないと考えたほうがいい。瞬時に頭を切り替えたなまえは地面を蹴り空高く舞い上がる。その場でバリアジャケットを身につけ、国境付近まで行き息を潜め気配をたどる。道を走るよりも早いため重宝する。

少しだけ過去を遡ろうと思う。なまえが白雪とであったのは3年前だ。
3年前、意識が混濁していた私は白雪に看病され、九死に一生を得た。次元震に巻き込まれるこの体質のようなものを患ってもう何年目であろうか。いつになく無防備に超えた反動からか、彼女いわく半年ほど記憶が戻ることはなかった。人形のようで目に生気がなかったらしい。

そんなことはいままでで初めてだったので意識が戻ってなまえは驚いた。文字通り廃人と化していたのだから。半年も看病してくれていた彼女ならば、信用できるとなまえは白雪に行き場が無い。自分には帰る家がない、必要経費は支払うため、療養の間、家においてくれ、ということを正直に話し、白雪も驚きながらも了承してくれた。まあ、おそらくこの容姿のせいでリハビリも兼ねて簡単な手伝いを希望されたが。こちらとしてはもっといろいろ割り振ってくれた方が筋トレにもなるし良かったのだがなまえは自分からそういった仕事は探そうと言葉を飲み込んだ。


数ヶ月リハビリに専念し体力の衰えが戻ったところでなまえは白雪に告げた。


「あの、白雪…今までありがとう、ございます…。もう、大丈夫だから…。わたし行くね。何かあったらどんなことでもいいからわたしを頼って」

私の抽象的な言葉に白雪はぽかんと口を開けその後どういたしまして、とにっこり笑った。

「行くあてはあるの?」

その問いになまえは答えられず目を伏せる。どこか森の奥にでも身を潜めてまた成果の見えない研究をするもいいけれど。そうも答えられないなまえは、電子的な連絡手段というものがこの世界にないことをこの数ヶ月で理解していた。一瞬だけ策士だな。と頭によぎったところで白雪にてを差し出された。

「私は貴方が私よりも年下で口下手なことを知っているよ。影で色々手伝ってくれたことも。」

薬草図鑑をルークに読み込ませ薬草を採取してきていたことを暗に言っているのだろうか。白雪は私に目線を合わせるために膝を折った。そのまま手を掬われ、なまえの手を握りしめ目を細めて微笑んだ。

「なまえ。」
「白雪…」
「私は貴女が元気になってくれてとても嬉しいです。さっきの言葉も私を思ってくれたんだよね。私は常々自分の道は自分で描きたいって言ってたし。」

うん。こくりと頷いて白雪の言葉をまった。
「これは私の我儘なので、なまえは話半分に聞いてください。」

1年近くお世話になった白雪の話を無下になんてできないよ。なまえは言葉にせずその言葉を受け止めるべく白雪の手を握り返した。

「私の進む道になまえ、貴方も隣にいてくれたら嬉しい」
「いいよ。

…白雪…いいの…?」

意味を理解する前に頷き、理解してから尋ね直す。

「私はこの一年で、なまえが近くにいることになれちゃったんだよ。急に居なくなられたら、すごく寂しいです。なまえに行かなきゃならないところがあるのなら、話は別だけど……」
「いいよ。白雪に助けられた命だし。白雪の描く道にも興味がある。断る理由、ないよ。」
「よかった!」

大好きな鮮やかな赤の髪に魅入られなまえは目を細めた。


無意識にそこまで思い返し、奥歯を噛み締める。

「ルーク!!」
<<サーチャー展開>>

国境付近にたどり着いたなまえは高い木の枝に止まった。魔力球をいくつも飛ばしなまえは空間モニタをいくつか展開させる。
(動力はなまえの魔力のためきれない限りはバッテリーは切れない。愛機にインストールされているシステムに倒れ自体は一転した。
連れて行かれた白雪になまえは無言で立ち上がり、闇打つか。とココロに決めた。

「国境近くの街、だっけ?」

ドスのかかったなまえの声に森の鳥たちは一斉に羽ばたいていった。