沖田/甘




ポカポカと太陽の暖かい日差しと、気温にウトウトしながらも、膝の上にある頭を優しく撫でる。それに対し反応は何も無くて、少し寂しくなるがスースーと立てる寝息が愛おしくて笑みが零れた。


気持ちがいいな…。春は本当に素敵な季節だと思う。寒すぎないし暑すぎなくて丁度いい気温だし、風も穏やか。花は沢山咲いてお花見もある。

それにこうやって総悟の寝顔が拝める……拝めると言っても彼の鼻から上は、トテモトテモ…センスのあるアイマスクのせいできちんとは見られないのだが…。


『(……幸せ)』


あの日貴方と出会えて、本当に良かった。けどそれと同時に不安もある。


『私なんかで、いいの……?』


思わず口に出た本音。総悟は真選組一番隊隊長で、凄腕の剣士。それに比べて私はなんの取り柄も無いただの一般人。…考えなくたって釣り合わないことくらい自覚してる。総悟、美形だしその気になれば美女だって簡単に落とせる。バカみたいにドSだけど…。

私って魅力あるのかな……顔も平々凡々だし胸、は…平均だと、思いたい……。スタイルも特別に良いわけじゃないし……あ、ダメだ。ダメダメ、せっかく一緒に居るのに恐ろしく落ちるところだった。

やめたやめた、思考を停止しよう、そうしよう。大丈夫、得意分野だ。目が痛くなるくらいの眩しい太陽を仰いでは、気分を変える為愛しい彼を見つめようと俯いたところで私の全ての動作は止まった。

赤茶色の瞳が私を捉えていたから。


『っ、びっくりした……いつの間に起きたの?』

「遊乃」

『なに、総悟』

「俺ァ、あんたじゃなきゃ嫌でさァ。理由なんてそれだけで充分だろィ」

『ぁ、〜〜っ!!き、聞いて…!?』


咄嗟に口を覆って目を見開く。このやろ、狸寝入り!?信じられない、恥ずかしすぎるッ!総悟を睨みつけると、彼は反対に目を細めニヤリと笑った。もうそれさえもカッコいいと思うんだから、重症だよ。

ふいに上半身を起こした総悟は、私の手首を掴んで唇に触れた。そしてまた膝の上に頭を預け「今度こそ寝やす」そう言ってアイマスクは取ったまま、瞳は閉じられた。


あぁ、多分、貴方には一生敵いません。

顔に集まる熱を冷ますように、握られていない左手で顔を仰ぐことしか私には出来ません。ああ、冒頭の眠気なんてそんなのとうの昔に覚めましたよ。

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