ジャンを後ろへ庇い、いつでも発動出来るように構える。
「十字架よ、アクマを破壊!魂を救済せよ!!」
言葉と共にアレンは左腕を振り上げた。レオに当たる直前、ジャンは私の横を通り抜けレオを庇うよう両手を広げアレンからの攻撃を阻止する。
「しまっ、ジャン!何して……!」
「な、なんで…?なんでレオがアクマなんだよ?オレの親友だぞ?パトロールだってこいつと始めたんだ。ふたりで街を守ろうって……こいつがアクマなわけないじゃん!何を証拠に言ってんだよ!!!」
レオのことを信じているジャンの悲痛な叫びをも嘲笑うかのように、レオ"だった"者は醜い兵器へと姿を変え、銃口をジャンの後頭部に宛てがう。
「「ジャン!!」」
私が動くよりも早く、アレンが対アクマ武器の大きな爪の中へとジャンを隠し、AKUMAからの攻撃をもろに直撃してしまったアレンは体中にペンタクルのマークが浮き出て、苦しそうに呻く。
「あ、れん……!!」
アクマにされてしまった魂が見えると、そう言ったアレンに伯爵は首を傾げた。体内にイノセンスを宿したアレンは、毒を自力で浄化して体中のペンタクルを消す。
「呪い…僕は昔、大切な人をアクマにした。その呪いでこの目には、アクマに内蔵された魂が見えるんだ」
「あ―――!!思い出した…我輩は昔お前に会ったことあル…お前はアレン・ウォーカー父親をアクマにしたあの時のガキですネ!」
「AKUMAは哀しすぎる。この世界にあっちゃいけない!だから、破壊します」
「アレン、お前はあの時殺しておくべきでしタ」
アクマの上に乗った伯爵は私達を殺せとアクマに命令する。銃口がこちらへと向くのを見てジャンを後ろに隠し、今度こそ私も守らなきゃと思うが、でも、発動すれば……
数十の弾がこちらへと降ってくる。それをなんなく交わしたアレンは、伯爵を挑発した。
「ムウ、ナマイキ。それでハ、東の国のことわざを知ってまス?ヘタな鉄砲…数打ちゃ当たル。アクマなんてくさる程いるんですヨ」
言葉通り何十ものアクマが夜空に広がった。守らなきゃいけない命が後ろにあるんだ、何を躊躇する必要があるのか。
「イノセンス…発動……」
「ラズア……!?」
言葉に反応するように、私の背中からは翼が生える。片方の翼は真っ白く、もう片方は真っ黒な翼。
「アレン、ジャンのことは私が守るから気にしないで。暴れてきていいよ」
「……では、お言葉に甘えて。ジャン!ラズアから離れないで!全部破壊する!!」
翼でジャンへと風を送れば、羽がジャンの周りを円状に囲い、護るように結界が張られる。
「ばか…やろ…ばかやろうレオ…っ!母ちゃんをアクマにしてまで…会いたかったのかよ…っ」
「ジャン……頭と心はね、時に反発するの。頭では分かっていても心はどうしようもないときも、あるんだ……」
「ラズア……。ごめん、レオ。オレが伯爵のことを教えたせいだ…カラクリばかりで人間の心を何もわかってなかった。壊してアレン!!」
泣き叫んだジャンの言葉に応えるように、アレンは大量のアクマを一掃した。この隙を付けるだろうか?足に力を込め、軽く飛べば翼は私を軽々と持ち上げ瞬時に伯爵の前へと移動する。
少し目を見開いたかと思えば、私のイノセンスを見た途端にあの気味の悪い笑顔を浮かべた。
「やはりあなたでしたカ。我らがお姫サマ」
「誰がお姫様だ、デブゴリラ!!!飛羽ッ!!」
「デブっ……反抗期ですカ〜?ま、今回は邪魔者もいますし、あなたのことは諦めまス。神の使徒エクソシスト。お前達がどうあがいても世界を救うことはできませン。絶対にネ……ラズア、あなたは必ず迎えに行きまス」
私の攻撃を軽い動作でかわし、ふざけた言葉を残して伯爵は忽然と姿を消した。どうあがいても、世界を救うことは出来ません……か。そんなのやってみなきゃ分からないでしょうが。迎えにだと?来てみろってんだ。返り討ちにしてやる……!!
拳を握りしめジャンの声と何かが倒れたような音にハッとして、地に降りる。
「アレン大丈夫!?なわけないね!!すぐ医者呼んでくるから!!ジャン、アレンの様子見てて!」
震える声のジャンの頭を数回撫で、痛む胸を無視して私はその場から逃げるように走った。
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