01


気付けば意味が分からない場所に立っていた。いつから緑の自然に囲まれた自室になったのだろうか、考えてみるが考える程意味分からなくなってくる。だが確かに私は家に居て、自室に戻ろうと扉を開けた。そしてこの状態だ。本当意味分からない。普通に森の中とか有り得ない。アニメじゃないんだから自室の扉をくぐれば森でしたって?ふざけるな。
気付いたら扉も消えており、仕方なく小さく溜め息をついてとにかく人を探して帰り道を探そうと足を一歩一歩進めて行く。幸いにもすぐ側を小川が流れていたためこれに沿って山を下る事にした。

しばらく歩いていると大きな樹木が見えてきた。ここまで来るのにかなり歩いたと思う。多分これは神隠し的なものではないのだろうか。だって私家にいたもん、絶対そうだもん。現に私スリッパはいてるんだもん。歩きにくくて仕方なく、先程から何度も転びまくって足なんてズタボロだ。足に口があったら絶対もう歩きたくないよって泣き出しそうなくらい。ほんとに一体ここは何処なのだろう。


「お腹すいたよー」


樹木までたどり着いて再び溜め息をつく。辺りを見回せば空は赤く染まってしまっていて夕方だということを物語っている。早く帰りたい。お腹がグゥ、と小さく同意してくれた。
大木に腰掛けもう歩きたくないな。今日は野宿かと覚悟を決めて布団にすべく枯れ葉を集め始める。もう野宿とか有り得ない。普通の生活してて野宿なんかしたことなど無い。酷い空腹に私はとにかく寝て空腹を無視することにしたのだった。
不意にガサガサと茂みが騒ぎ出した。もう寝る準備は完璧であとは潜って寝るだけだったが茂みから出てきたモノは大きな薙刀を持った猪のような化け物だった。

これはもう、私は色んな意味で帰ることが出来そうにないのだと悟った瞬間だった。



***



「やだぁああぁあ!」

「ぐへへへ」

嫌な予感はこの化け物と遭遇してから薄々感じてはいた。絶対ヤバい、そう思った刹那に化け物は嬉々として私に襲いかかってきたのだ。今まで生きてきた中で見たことの無い生物に驚きと恐怖に足が早く逃げろと急かすように動いた。それよりここはどこで私は一体何処に向かっているのか、無我夢中な私はそんな事を考えるのを頭から削除してひたすら走り続けた。
暫くするとまさかの一面花畑に出てしまった。ずっと森から出ないように必死に走っていたのにも関わらずに。これでは撒くことはおろか、隠れることすら困難、むしろ隠れることは出来ない。イコール私、ピンチ。私の死に場所が花畑だなんて花畑も可哀相に。もう私死ぬんだ、とすでに限界を越えた足はフラフラと花畑の中に崩れ落ちる。(スリッパなんてとうに捨てた)荒い息が私ともう1つ、すぐ後ろに存在した。ドクドクと心臓が荒々しくなるのはただの息切れのせいであって恐怖ではない、そういいきかせなければ今にも泣き出してしまいそうになる。カチャン、すぐ後ろで聞こえてくる金属音にギュッと目を瞑って衝撃を受け止める準備をする。出来るなら一思いに即死で頼みたい。大きく振り上げられる気配がした。
ザン、と肉を切り裂く音と共に鉄のにおいが辺りを包み込んだがいつまで経っても来ない痛みに恐る恐る目を開けるとそこには銀の長髪を靡かせた美形なお兄さんが立っていた。


「殺生丸さますごーい!ね!邪見さま!」


そのお兄さんの後ろから小さな女の子と小さい変な杖ついた化け物がひょっこり姿を現した。ついでに女の子は頭が2つある変な動物(でもやっぱり化け物)に乗っかっていた。もうここ何。意味不明な状況で頭の中はパニックだ。とりあえずこの目の前にいるお兄さんに助けてもらったのは確か。お礼を言わなければ、そう思うが先程の恐怖からのせいか喉が張り付いてしまい声が出せない。


「あ、あの」

「失せろ」

「え、え?」

「人間が一人出歩くな」


ギロリと睨まれ足がすくむ。が、失せろと言われどうしようもなくただ言われるままにその場を後にした。今更だがよくあの人たちを見れば一人人間がいた気がする。お願いして一緒にいてもらえば良かった、思ったが後の祭りだ。
仕方なく私は宛もなく再び歩き出したのだった。