私のコンプレックスは生まれたときからある背中側に近い脇腹にある傷。
小さければそんなもの気にもしないがこれまた意外と大きくて夏とかになると憂鬱になるのだ。年頃の女の子が水着を着れないって何事。それに彼氏が出来てもこの傷を見て気持ち悪がられる。散々である。

そして今、最も散々な目に遭わされている。


「えー…どこ?」


学校に行こうと思って家のドア開けたらそこに広がるのはいつものコンクリートの仕切りや電柱などではなく日本の屋敷みたいな、そんな家の庭にポツン、と私だけが立っていた。

人気は有るみたいだけどなんか、うん。どんよりしてるみたいで息苦しいような感覚が自身を襲う。


それよりも学校に行かなければならないため、ここが何処か聞かなくてはならない。
すいません、と縁側から声を掛けるが誰も出てこない。どうしたものか、ここって人様の家だよね?下手に彷徨いたら捕まりそうで怖いんだけどどうしたらいいのかな…。


「ん?あっちに人がいる?」


わいわいと話をする数人の声がこちらに向かってやってくるのが分かった。これはありがたい、とダッシュでそちらに向かう。


「すいませーん!」

「ん?っ、なまえ…?」

「え?あれ、わたしお知り合いでした?」

「なまえっ!なまえだよなっ!すまなかった、本当にすまなかった!俺たちは取り返しのつかないことをっ、許される事だとは思ってない!」

「う、え?ちょ、落ち着いてくださいよっ、」

「なまえ先輩っ!」

「本当になまえ先輩?」

「せんぱーいっ!ごめんなさいぃ…」

「っ、なまえ、先輩っ、俺、俺っ…」


待って。本当待ってよ。誰よこの子たち。深緑の人はじめこの緑茶色の子やら水色の子たちやら一体何事。緑茶色の子なんか涙目になってますけども。
ガシリ、と掴まれる肩にヒィッと声を出してしまったが彼は気にも止めずにグイグイとそのままよく分からないが押され、そして子供たちはわたしの手を握り離さないままある場所へと連れていかれた。そこへ行くまでひたすら話続けるその人は多分勘違いしてる。


「あ、あのっ!」

「本当なまえが帰ってきてくれて良かった、あいつらも喜ぶ」

「あいつら…?え?」

「着いたぜ、ほらよ。」


トン、と背中を押されて入った部屋は多分食堂みたいなところ。
いきなりわたしが入ってきたため食事を摂っていた子供たちがいっせいにわたしを見る。
そういえばみんな忍者みたいな格好してる。なんだ?役者さん?映画とか撮ってるのかな?にしてはスタッフみたいな人達が見当たらないし。なにここ。
とりあえずこの痛々しい視線から逃れたくて後ずさってみるが背後は先ほど出会った彼らによって塞がれている。

わたし、なんかしましたか…?



「なまえっ!」



不意に呼ばれた名前に返事をするかのように顔を上げてしまったのがいけなかった。

目の前に現れた深緑に包まれた少年たち。何度もわたしを呼ぶ彼らに本気で怖くなって、とりあえず。



「さ、さようならっ!」



脱兎の如くにげました。








(逃がさないよ、)(なまえ)

あなたたちはだれ




20121119

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