「でね、その子が優しくて声も超かっこよくてさ!」

「それと俺どういう関係があるのか聞きたい」

「仲良い子今居ないし」

「うわ先輩哀れすぎて同情します」

「違うからね!ただ先生に呼ばれて今居ないだけだからね!」

「そんな必死ならなくても…あーメンド。」


ばか!と棘田の頭を殴るとカエルが轢かれたかのような声を上げ恨めしそうに此方をジトリと睨むそれをスルーして再び昨日の出来事についてひたすら語ると心底ウザそうに「ハイハイ」と適当に相槌打たれた。


「ちゃんと聞いてー!」

「あー?聞いてんじゃん」

「私先輩だよ!三年生!」

「そういう事言うから先輩扱いされねえんスよ。」


ぷちんと何かが弾ける音がした。イコール腹立ったからもう一度殴ると胸ぐら掴まれて怒られた。うあー苦しいよー!私先輩なのに何でこうなるの!まあ自業自得なのだが。離してー!と叫んでいると遠くの方から誰かが歩いてくる足音が背後から聞こえてきた。超ナイス!誰か分かんないけど耳元で怒鳴られ続けると流石にしんどいから取り敢えず助けて。


「…………先輩何してるの」

「ん?あ。鷹じゃねえかよ」

「……苦しそうだよ」

「こいつムカついてよ」

「棘田まじ潰す!」

「あ、昨日の…」

「え?あっ!君は昨日の紳士!」


まさかこんな状態で再会だなんて!
うあー!タカくんって言うんだ!やーん可愛いカッコいいまじで素敵だわー!
また会えるなんてもしかしてこれはもう運命なんじゃない?頭の中できゃいきゃい騒いでいると蕀田がかなりウザそうに私を見てベロを出していた。そんな私たちを尻目に少し離れたところで腰を下ろし手にしていた本を広げ読書を始めた。


「タカくん」

「何?」

「昨日はありがとうね」

「あ?昨日?」

「棘田が見捨てたプリントばら蒔き事件」

「ああ…」


こちらに視線を送ったかと思ったら「別に」と呟き、手に持っていた本に再び目を落とし私はそのタカくんの読書する綺麗な横顔を時間が許す限り眺めていた。