「ほんま堪忍してや…」

「そんな照れなくても!」

「見事なまでのKYぶりやん」


あの盗撮の悲劇から一夜明け、盛大なため息と共に自宅玄関の扉を開ければそこには昨日悲劇を生み出した張本人である大和猛が爽やかに笑顔をつくり立っていた。
別に学校の玄関とかで待っていてくれたりこう家まで来てくれたりすると彼氏だったら普通に嬉しいよ、人としてそう思うよ。でもさ、盗撮とかされてのこの行動だからね。もうどう反応したら良いのか全く分からない。とりあえず軽くスルーして歩き出すと後ろから変態がくっついてきた。振り向けば先程よりも満面の笑みでこちらを見てきて、しかも「手でも繋いでほしいのかい?」とも言い出した。ばか!んな訳あるか!


「ちょ、何!?」

「ほら暴れないで」

「ぐぬーっ!貴様なんのつもりだぁああ!」

「ほらほら、はい。」

「何で恋人繋ぎなの!てか私らなんで手繋いでんの!」

「だってなまえ氏が…」

「え、私のせいなん?え?マジ話?」


もう良いや、好きにして。そう項垂れると目の前の奴はそりゃもう良い笑顔で私の手を引いて走り出した。待って待って、待てやぁああぁあああ!!!!!!こいつ早い!ものごっつ早い!お前分かっとんのかこちとら帰宅部じゃボケェ!!!足やばい足。そのうち足がもつれて地面と正面衝突しそうなくらいなんだけどー!止まって、と叫んでも何故か大和はあははは!と笑って今、この状況を楽しんでいる。そのまま学校まで連れていかれると中庭で不意に(しかも急に)止まられた。もちろん私はそんな急になんて止まれなくて大和に激突した挙げ句、運動とは無縁の私の足がガクガクなため奴にすがるような体勢になってしまっている。そんな私を見た大和は「なまえ氏っ!」と目を輝かせて、生まれたばかりの小鹿状態の私を力一杯抱き締めた。これははたから見れば抱き合ってるように見えるだろう。言っておくけど抱き合ってないからね。周りの生徒からは「やっとくっついたのかー」とか「おめでとう!」とか囃された。
ンなわけあるかいボケカス!その囃しが恥ずかしくて足が回復してきたのを見計らい目一杯奴を突き飛ばして全力で教室まで走って逃げた。



(朝からお熱いことでー)(あれはちゃうんや!不可抗力なんや!)(意味わからんわ)