「眼中にねえんだよ」



ある日あまりの眠たさに堪えきれず授業をサボって裏校舎で寝ていた時だった。あの人の声が近くで聞こえたのだ。なんだなんだ、野次馬魂を持つ私の血が騒ぐのを感じた。丁度私がいたところは相手からしたら死角だった為少し頭を覗かせても全く気づかれなかったが、頭を出して後悔。視界に入ったのはあのクリフォードだったのだ。クリフォードであまりよく見えなかったがその先には女の子が俯いて立っていた。俗に言う告白シーンか。うわ、嫌なところに出会してしまった。しかもどうやら女の子は振られてしまったのだろう、結構離れている私のところからでもよく見える程肩を震わせていた


「…私も、あんな感じに振られるんだろうな」


ポツリと呟いたソレは風の音でかき消された。しばらく二人のやり取りを見て完全に奴らが去って行くのを見て私もそこから離れた。


***


「おい」


授業も終わり早々に帰る支度をしているとクリフォードが私の目の前に現れた。好きな人が突然現れ頭の中はパニック、体はガタガタ震えて声も出ない状態。そんな私を嘲笑うかのように彼は「覗きなんてキモいな」と耳元で囁いた。

違うの、確かに覗き見したけどそれはたまたま二人を見かけて目がいっちゃってただけなの。まって、ちがうよ。言い訳が喉元で止まり、何も言葉が出てこない。


「あの、ご、め…なさい、」


ようやく出てきた言葉は謝罪の言葉。確かによくよく考えれば覗き見してしまった私が悪い、しかたない。
彼は私の顔を見て鼻で笑い自席に戻っていった。そのクリフォードの見下した表情すらかっこいいと思ってしまう私は恋に侵されているのかもしれない。


「なまえ大丈夫?」

「うん」

「てかクリフォードに何言われたの」

「早口すぎてわかんなかった」


あはは、と笑って誤魔化すけれど友人は悲しそうな顔をして頭を撫でてきた。それを見ていたクリフォードはまた遠くから小さく睨みつけていた。