胸を貫いた衝撃に、オプティマスはたたらを踏んだ。踏みとどまった足の下で、アスファルトが陥没するのを感じる。十トン以上の機体をよろめかせるほどの威力を持ったそれが、自身の胸から飛び出していったのを、オプティマスは視界に確認した。
 風穴の空いた場所から激痛が走る。刹那、目の前が赤く染まる。危険信号がガンガンとブレインを揺らした。
 それでも、オプティマスは倒れなかった。
 振り向き、黒煙の中から現れた敵を確認し、叫んだ。
「実写、逃げろ!」
 次なる攻撃の気配に身構えるも、損傷を負った機体は重かった。ブレインが弾道を弾き出す。出来たことはそれだけだった。なす術もなく、オプティマスはふたたび胸の装甲に重い弾丸を受けた。
 吹き飛ばされ、横倒しになったまま、オプティマスは不吉な予感にもう一度、喘ぐように実写に呼びかけた。
「実写、逃げろ⋯⋯。テ、ッサを⋯⋯連れて⋯⋯逃げるんだ⋯⋯」
 機体のダメージは深刻だが、スパークは損傷を免れている。弾は外れた──いや、意図的に外された。今の自分のスパークを、奴は容易く破壊できたはずだ。しなかった理由がある。それがどういうことか。どう考えても、事態が好転するものではない。
「オプティマス!!」
「駄目だ、実写、逃げろ⋯⋯頼む⋯⋯」
 胸によじ登ってきた実写を、オプティマスは必死に促した。彼女の背後に不気味な影が迫っている。
「早、く⋯⋯」
「⋯⋯いやだ」
 覚悟を決めた実写はそっと呟いた。もとより離れるつもりなどない。たとえこの身がどうなろうとも──彼を独りにはしない。もう二度と。




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