デュークと恋人という関係になってから一番驚いたのは、彼がものすごく求めてくる人だということだった。
 いや、初めての恋人で、初めて“そういうこと”をした相手だから、比べる対象もいないのだけれど。しかしそれでも個人的な感想は『けっこうかなり精力的な人』だ。普段は潔癖なイメージすらあるのに、そういうことに対して恥じらいも躊躇いも見せず、自分には頻繁と思える間隔で求めてきた。

 お互いに別動隊としての任務もなく、同じシフトで通常勤務が終わった日、わたしたちは格納庫や署の屋上で少しのあいだ一緒に過ごす。話をしながら補給をして、それで彼の部屋の前で就寝の挨拶を交わすのだが⋯⋯。

「それじゃあ、おやすみなさい、デューク」
「──部屋には来ない?」

 彼はほぼ毎回、こうして部屋に誘ってくる。大きな事件がない限り、同じシフトで勤務が終わることは決して少なくはない。部屋に誘われる以外でも、彼がわたしの部屋に来るとかパターンはいくつかあって、だから戸惑ってしまう。
 どうしてそんなにしたいんだろうか。わたしも、求められるのは嬉しくて、恥ずかしいけど嫌なわけじゃない。けれど、こんな頻繁にというのは、なんだか⋯⋯癖になってしまいそうでちょっと怖かった。

「BP-115」

 彼は静かに、思わせぶりな視線でわたしを見つめる。ひたすらに優しく、でも、ほんのわずかに昏く湿った熱を孕んだ目で。

「え、と⋯⋯すみませんけど⋯⋯」
「そうか⋯⋯分かった。おやすみ、BP-115」

 強引に引き留められることはほとんどない。彼によって習慣化されたおやすみのキスを──これは感性というか育ちというか⋯⋯意識の違いを感じざるを得ない。彼はやっぱり英国人なのだ──未練がましく長々とされることはあっても、誘いの言葉も一度きりで、絶対に無理強いはしてこない。
 ただ、ひどくもどかしそうな、切なそうな顔をするから、ずるいと思う。悪いことをしているわけでもないのに、自分が彼にとてもひどい仕打ちをしているような気になる。

「あなたの部屋に入ったら⋯⋯か、帰れなくなります、からっ」

 俯くことで視線を逸らしながら、自分の中に湧く理不尽な罪悪感に言い訳すると、笑いを含んだ吐息が耳に触れた。

「だって、帰す気がないからね」

 ⋯⋯そんな堂々と言いながらキスしてくるなんて、やっぱり、彼は、ずるいと思う。




英国人のデューク的にはむしろ普通の頻度だよ!がんばろうね!
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