「勇者ロボ」

 モビィ・ディック内の通路で呼び止められて振り返った彼女は、予想外の人物にオプティックを瞬かせた。深緑の機体に精悍な顔付きの⋯⋯。

「ダグアーマー? なにかあったんですか?」

 彼が融合合体しているということは有事である。勇者ロボはさっと表情を険しくして向き直った。

「ああ⋯⋯。すごく大変な事態だ」
「どうしたんです?」

 あまりに真剣な面持ちのダグアーマーに、勇者ロボは緊張した。これは出撃する事態になりそうだ。

「勇者ロボ。俺はな、今までのことは、やっぱり俺の主義に反すると思うんだ」
「え? ⋯⋯あの⋯⋯それはどういう⋯⋯」
「勇者ロボ!」
「は、っはい!」

 ガツンと手を掴まれて間近に迫った顔に、勇者ロボは思わず仰け反る。

「俺とデートしよ!!」
「は、ぁ⋯⋯?」

 意味が飲む込めず、ぽかんとしてしまった。その間にもダグアーマーは饒舌に迫ってくる。

「俺はさ、可愛い子が目の前にいて声を掛けないってのはシツレーだと思うんだよ。俺は人間で、君はロボットだけど、やっぱり可愛いもんは可愛い! だからさ、ね!?」

 ぐいぐいと詰め寄られ、壁に背中がぶつかった。どうも口説かれているらしいということに、勇者ロボはそこでようやく気が付いた。

「あの⋯⋯もしかしてこのためだけに融合合体を?」
「君を口説くならこっちの姿のほうが良いかなあと思って」

 えへへと人懐っこい笑みを見せるダグアーマーに、勇者ロボは深々と排気した。すわ出撃かと構えただけに、拍子抜けというか、すっかり気が抜けてしまった。

「ダグアーマー⋯⋯あなた⋯⋯」

 呆れとも安堵ともいえない溜め息と共に肩を落とした彼女に、ダグアーマーは哀れっぽく、さらに縋りつこうとした。

 その時。

「勇者ロボ、どうした? ⋯⋯ダグアーマーも」

 新たに掛かった声に、勇者ロボがぱっと顔を上げる。

「エクスカイザー」
「⋯⋯なにをしているんだい?」

 壁際に追い詰められ、男の腕に囲われている彼女に、エクスカイザーは首を傾げた。彼は薄く微笑んでいたが、その目には少々危険な色がある。
 ダグアーマーは敏感にそれを感じ取り、おどけた仕草で勇者ロボから身体を離した。さすがにエクスカイザーを敵に回すのは賢明とはいえない。

「いやあ〜。俺はさあ、凶悪な宇宙人とじゃなくて女の子と青春したいわけなのよ。勇者ロボみたいに可愛い女の子とさ。エクスカイザーにも分かるだろ? 厳つい敵さんばっか相手にしてると心が荒んじまうっていうかさあ」

 エクスカイザーはさり気なく二人の間に割って入り勇者ロボを背に庇いながら、ダグアーマーの言葉に同意を示した。

「⋯⋯まあ⋯⋯分からなくもないが⋯⋯」
「だろ? それにさ、こんな可愛い子をデートに誘わないなんて失礼だし」
「しつれい⋯⋯」

 エクスカイザーは彼の言葉をどこかたどたどしく反芻し、うんうん頷いているダグアーマーに、ふぅむと唸った。そして同じく一つ頷いたかと思うと、勇者ロボに向き直る。

「なるほど──では勇者ロボ、良ければ私とデートしてもらえないか?」
「えっ⋯⋯!?」

 エクスカイザーからの唐突なお誘いの言葉に、勇者ロボはみるみるうちにイヤーパーツまで真っ赤になった。あたふた狼狽えて、そして最後は俯きつつも小さく頷く。ダグアーマーのときとはえらい違いである。

「ではダグアーマー。すまないが、彼女は“返して”もらうよ」

 自然な動作で勇者ロボの腰に手をやって促しながら、エクスカイザーは薄く笑んだ。俺が先に声を掛けてたのにと言う間もなく、スマートかつ牽制も忘れず奪い去ってゆく彼に、ダグアーマーはトホホと肩を落とす。誰がどう見ても完全敗北だった。

「ああ、俺の白百合ちゃんが⋯⋯」

 去ってゆく背中を寂しく見つめ、

「でも可愛い女の子たちはまだまだいる!」

 拳を握って叫んだダグアーマーはまことにめげない男なのだった。




シンとかヨクって夢的には最高に使いやすいキャラで有難い(笑)
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