初めて
目を覚ませば見たことのない天井、
なんてどこかの主人公が言ったようなセリフが頭をよぎった。
いつも以上に体が重い、思い通りに動かせない…
視線だけでもと頭を動かそうと思い、ふと思い出す。
私の体は、目は、耳は、あの時…
衝撃と痛みがぶりだしてくるような感覚に飲み込まれ、叫びたくなる。
いや、実際に叫んだ。
「おぎゃああああああぁぁぁぁ…あ?」
自分の叫び声に思わず、叫ぶのをやめるほど私は衝撃を受けた。
なんだこの赤ちゃんが泣き叫ぶ声は、
私の声とは違いあまりにも甲高い声で泣いていた声は私の叫び声を止めたのと同時に消えた。
この時になってやっと私は周りを見た。
周りが自分よりも何倍も大きいことに、そして気づくのだ。
私が今、赤ん坊であることに…
一回冷静になってみてみれば、私は転生したということがゆっくりとだが納得できた。
どんなにあがいても前世の記憶が消えるわけでもなければ、戻れるわけでもない、
あの時に浴びた痛みはいまだに覚えていて、時折私に襲い来るが、それでも私はこの世界で新たな命を全うしていこうと新たに決意した。もちろん心の中でだが、
新しい両親も見た目は変わったが、前世と変わらず私に愛を注いでくれるし、そんな両親を私も心の底から愛している。
そんな中、私は運命的な出会いを果たしたのだ。
思い返せば私は子供らしからぬ子供で、保育園の先生方もさぞかし扱いに困った事だろう。
いつも外では遊ばないし、絵本も字をしっかりと読んで、着替えも、トイレも、何もかも先生の手を借りずにこなしてしまっていたのだから、
だからといえばそうなのだが、私は子供たちの輪から抜けていた。
女の子とは難しいもので、いったん仲間じゃないと思い込めばはじき出すのだ。
いくら先生が仲良くしなさいと言っても表面上は返事をして、その後ははじき出す。
なんとも怖い世界だが、悲しきかな私もそんなことをしていた時があったのだ、
精神年齢が前世の分、周りとの差があるためか、そんな世界も可愛らしいモノに見えてくるのだから不思議だ。
言うなれば、痛くもかゆくもない状態だったが、いじめっぽいものは受けていた。
そんなある日、
いつも通り部屋でおとなしく折り紙をしていると、クラスの中でも体格がいい子(いわゆるガキ大将)が急に大声を出し、何かに対して怒鳴り散らしていた。
先生方は慌ててその子のもとに駆け付けどうしたの、何があったの?と質問を飛ばしている。
しかし、肝心の男の子はすでに半泣き状態、言葉にならないうめき声をあげて先生に何かを必死に伝えようとしている。
周りもそんな男の子に対してどうしたの?大丈夫?と声をかけていた。
そんな時小さな声が、
「ごめんなさい」
と、はっきりと言ったのだ。
周りががやがやと音を出している中で、その子の声は自然と通り、私の耳まで聞こえてきて、とてもきれいな音だと私は認識したのだ。
そして気が付いた。
泣きじゃくる男の子の隣に、小柄なとても儚い男の子が傷ついた顔で佇んでいることに、
先生もやっと気が付いたのか、ビックリしたかのように黒子君と彼の名前を言ったのだ。
泣きついていた男の子も黒子君に気が付き一瞬肩を震わせたかと思えば、こいつがやったのだと告げ口をするかのように指をさした。
パンパンと手を叩く音にビックリし、今までざわついていた部屋が静かになった。
園長先生が優しい笑顔でみなさん、遊びに行っておいでと言ったのだ、
みんなポカンと口を開けて、園長先生に従うように外に出ていく、
私もさすがにここで部屋の中に居座り続けようとはおもわず、外に出ていく。
泣きついていた男の子と黒子君だけが残り、私たちは追い出されたのだ。
この後はその二人と先生方の話し合いで、なんと解決したらしい、
しかし、これをきっかけに黒子君はいじめられることになった。
気が付いたのは、本当に偶然だった。
いつもと同じように絵本を読んでいると、小さな声で泣いている声が聞こえたのだ。
小さく我慢をするように、しかしうまく隠しきれていないそんな泣き声
きょろきょろと辺りを見渡せば、そこにはあの時と同じような傷ついた顔で泣いている黒子君を見つけた。
なぜだか、わからないけど先生も気が付いていないみたいで、
この時の私は前世で死ぬ直前と同じく、意識せずに黒子君のもとに歩いていっていた。
そして声をかけたのだ、
「どうしたの?」と、
大きく開かれた瞳には今にも溢れ出しそうな涙
この子はとてもきれいなもので出来ているのだなと、感じてしまった。
子供特有の素直さや残酷さをこの子は表しているように感じて、私の持っていないものばかり持っている気がして、
私はこの子となら仲良くしたいと、心の底から、この世界に生まれてから初めて感じたのである。
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