合宿編12



最初はただの転入生。
次は妙に大人びた女子生徒。
更にその次は精市を飼い馴らした凄腕。

微妙な時期の転入生で、その転入日前日になってからようやっと情報を得た。それも女子生徒というだけの情報。データ収集が趣味の筈なのにそれが悔しかった印象。

運良く隣の席だった為、頼れるクラスメイトのポジションを獲得したは良いものの、転入生である苗字名前は余り人に頼らない。

何となく授業を受け、何となくクラスメイトと会話を交わすだけ。お昼休みはいつも何処かに出ていたが、食堂にもいないようなので校舎の何処かで食べているのだと思っていた。

転入から五日経った日の事だった。
普段からぼうっとしている苗字が頭を抱え唸っていて、心底珍しいと思った日。お昼休みに彼女に着いていけば屋上に向かっていて、正直意味が分からなかった。だって今まで屋上に立ち入る生徒なんてほとんどいなかったから。

聞けば毎日精市と、そう、あの精市と屋上で昼食を取っていると言うではないか。最初は信じられなかった。でも精市と話している様子を見ていたら、その特有の不思議さで彼を懐柔しているんだと分かった。

精市が女子生徒に心を開くなんて珍しい事この上なく、普通の女子生徒とは違う不思議な苗字の事をもっと知りたいと思った。それなのに彼女に関する基礎データは集まっても、行動原理や理念なんかはこれっぽっちも分からなくて、もっともっとと欲が出た。

それが恋だと気付いたのは、合同合宿一日目の夜、精市と彼女が抱き合っているのを目撃した時だった。まるで心臓が焼け焦げてしまうような、言いようのない気持ちにさせられた。
だから、。


「柳だって、普通とは違う変な女子高生としての興味でしょうよ」

「最初はそうだった」


最初はただの転入生。
次は妙に大人びた女子生徒。
更にその次は精市を飼い馴らした凄腕。
今は、


「今は違うみたいな言い方」

「その通りだ」


今は、この静かで大人しかった心臓を、すぐに漣立ててしまう、俺の恋する人。

彼女の事になると、元々強かった知識欲が更に増し、何でも知りたくなってしまう。もっと色んな話をしたい、もっと色んな表情をみたい、もっと、もっと。

もっと、俺にだけに見せてほしい。


ほぼ独白
20190525 お肉