可愛い後輩?





「光ちゃんお疲れ様ー」

「お待たせしたんは申し訳ないスけど、ええ加減ちゃん付けやめてもろてええですか?」

「やだ。じゃ帰ろう!」


いつものフェンスで少し待っていると光ちゃんがやって来た。他のテニス部はまだ出て来ていない。普段なら謙ちゃんが真っ先に出てくるのに今日はそうじゃない事に少し違和感を覚えるが、気にしていても仕方ないので歩き出した。


「先輩って謙也さんの事好きなんすか?」

「好きだよ」

「はあ?ほなら俺と帰ってる場合ちゃいますよ」

「あ、そういう意味?」

「恋愛に決まっとるやないですか」

「光ちゃんから恋愛って言葉が出て来たことに驚きを隠せないよ」


そうして訪れる沈黙。辺りには二人の足音しか聞こえない。
あれ、いつもならここでちゃん付けやめろって怒られるのに。と、不思議に思い光ちゃんを見遣ると差し出されている手。


「え、なに?」

「手」

「うん」

「は?アンタそれほんまですか?」


光ちゃんはそれはそれは大きな溜め息を吐いた後、私の手を握る。なんだ、そういうことか。手を繋ぎたいならそういえばいいのに。あれ、でもおかしいぞ。


「こういうのって恋人がやるもんじゃない?」

「ほんまに頭お花畑っすね。恋人同士でやるのはこういうやつっすわ」


そういって指を絡める。
所謂恋人繋ぎ。思えばさっきの繋ぎ方なら女の子同士でもやる事がある。なるほど。


「光ちゃんの言う通りだった」

「でしょ?だから俺らが手繋ぐんも恋人だからちゃいます」

「分かった!分かったからこれはもうやめよう!なんか恥ずかしくなってきた」


依然として絡められた指に恥ずかしくなって俯いた。こんな事なんでもなさそうな余裕ぶってる後輩に、赤くなっているであろう顔は見せられない。光ちゃんは可愛いけどやっぱり生意気だ。


「ちゃん付けするのやめへんのやったらこのままですわ」

「それだけはやだ!」

「ほならこのまま帰りましょか」


そのまま手を引かれて帰った。
翌日登校したら光ちゃんと私が付き合っている噂が立っていたが、大阪人は噂話が好きなんだなとぼんやり思うだけだった。

もう後戻りは出来ない。




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201905 お肉