歪んだプシュケー




「名前ちゃん、ほんま?」

「え、なに?謙ちゃんいつからいたの?」

「なあ名前ちゃんはほんまに財前と付き合うてへんの?」

「それは本当!というかこの状況が分からない」


白石に状況の説明を求めると、どうやら光ちゃんと私の噂を耳にした謙ちゃんが真相を知りたがりこうなったそうで。
勉強会を拒否したのも財前との関係の為を思ったことらしい。


「謙ちゃんに嫌われたのかと思ってた……」

「嫌いなるわけあれへん!それはほんまにすまんかった。やって財前と手繋いで歩いとったっちゅー話まで聞いたんやもん」

「手繋いで帰ったのは事実だけど」


そう言った瞬間、二人はポカンとしたまま固まった。そして沈黙。空気が凍りつくとはこういう事を言うんだと思う。
最初に口を開いたのは白石。


「あー、苗字さん?」

「ん?」

「確認やけど、財前とは付き合うてへんのやな?」

「そう言ってるじゃん。不安なら光ちゃんにも聞いてみて」


白石は頭を抱え込み大きく溜め息を吐いた。謙ちゃんは相変わらずポカンとしたままだ。
そうして暫くした後、再度白石が口を開く。


「付き合うてへんのに手繋ぐん?財前はただの後輩なんやろ?」


確かに私も恋人じゃないのに手を繋ぐのは変かなと思ったのだけれど。初めて彼と手を繋いだ時に交わした会話をそのまま白石にも説明した。説明の為に白石と手を繋いだあたりで謙ちゃんの意識は復活した。


「名前ちゃんあかんで!そんなん財前に丸め込まれただけや!」

「うーん、やっぱりそうか」

「ちょ、もう、ほんっまあのクソガキ殺したなってきた」

「ええか苗字さん、恋人やあれへん男の言うことホイホイ信じたらあかんで?」

「はーい!白石センセ」

「あ、先生って響きええな。なんでも教えたなるな」

「ちょお白石も名前ちゃんに近づくなや!」


ノリで白石を先生と呼べばウットリとした表情を浮かべ、すかさず謙ちゃんが私を引き寄せる。謙ちゃんからフワリと香る男らしい匂いにクラクラしそうになった。


「とにかく!もう財前とイチャつくんは禁止!ええな!」

「はーい!忍足センセ」

「先生ちゃう!謙ちゃんやろ!」

「ふふっ謙ちゃんごめんね」


誤解も解けてまた謙ちゃんと喋れるようになったのが嬉しくて、その日はご機嫌のまま三人で帰った。たまには三人で帰るのもいいね、と言ったが"白石センセ"の件が尾を引いているのか謙ちゃんは今日だけだと言っていた。



▼▲▼





テスト期間最終日。
無事に全てのテストが終了し、今日から部活動が再開する。帰宅部以外の生徒はお昼ご飯を食べているが、私は帰宅部でお弁当を持ってきていないので帰るしかない。
謙ちゃんと白石に帰りの挨拶をし、昇降口を出た時だった。


「名前先輩もう帰ってまうんです?」

「やっほー光ちゃん。私帰宅部だからね」

「ほんなら一緒に昼飯買いに行きましょ」


そう言って手を引かれる。


「光ちゃん待って!ついてくから手は離して!」


少し前に謙ちゃんと白石に注意されたばかりだ。恋人でもない男と手を繋ぐのはやはりおかしい事なのだ。
けれど光ちゃんは手の力を緩めてくれない。


「今更やないですか?誰にも迷惑かけてへんのやし別にええでしょ」

「やっぱり恋人じゃないのに手繋ぐのはおかしいって!」

「嫌です」


それはそれは良い笑顔をした光ちゃんはより強く手を握り直し、コンビニへ向かいスタスタと歩き出した。繋がれた手は少し痛かった。




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201905 お肉