ヒソカと幼女
「おや?」
廃れた道の端くれ。何か面白いことでもないかと道草を食っていたヒソカは視界の片隅に光るものを見つけた。
近くに歩み寄るとより一層輝きを増すそれに人知れずヒソカは興味を唆られ、舌舐めずりをしながら歩みを進める。
「ふぅ、それにしても眩しいなぁ 一体なんなんだい?」
ヒソカはなんの変哲もないアスファルトの上にある光る球体を手に取った。
ブワッ!!
「!?へぇ…」
物凄い風圧と共に光る球体は形を変え、みるみる大きくなり、14、5歳程の少女へと姿を変えた。
それは眼を見張るほどの美しい少女だった。まるでおとぎ話のような目の前の出来事にヒソカはゾクゾクと高揚し、自分の腕に抱かれながらまっすぐに己を見つめてくる少女を狙いを定めた時のあの狂気染みた表情を浮かべて問いかける。
「キミは誰かな?」
「…、!」
パクパクと餌を求める魚のように口を動かす少女にヒソカは無意識に口の端を吊り上げた。
大方喋ろうとしても声がでないのだろうか、喉のあたりに手を当てて困ったような表情を浮かべる少女の手を取ってヒソカは彼女を見つめる。それはそれは穴が開くほどジッと見つめた。そして暫くするとヒソカはゆっくりと口を開いた。
「大丈夫、ボクがついてるよ」
「?」
不思議そうな顔をして首を傾げる少女の頭を撫でてヒソカは続ける。
「そうだな、まずは家に行こう ボク達二人のね」
「…!」
「うんうん、いい子だね◇」
コクンと頭を縦に振った少女を見てニコリと人のいい笑みを浮かべたヒソカは周辺に彼女の身の上がわかるものがないかを観察する。
一目見ただけで分かる程良い育ちのお嬢様だという事はすぐに理解できた。綺麗に結われた髪の毛、一般人ではとても着られないような豪華な服。ヒソカはある一点に眼を凝らした。ご丁寧にも服の袖あたりに名前が刺繍してあったのだ。
「キミの名前はルイ、ね。ボクはヒソカ」
「…ソ、カ!」
「!」
喋れなかったはずの少女が嬉しそうな表情を浮かべてヒソカの名を呼ぼうとした。なんだ、声は頑張れば出せるのかという考えは頭の片隅に。
ヒソカは呼ばれた名に雷を打たれたかのような衝撃を受けた。
「ソカ!」
尚も自分の名を呼ぶ幼い少女にヒソカはクツクツと笑いだした。光る球体の正体だった少女。ヒソカほどの使い手ともなるとパッと見で相手のオーラや大体の強さが分かる。だが彼女からは何も感じなかったのだ。人間ならばどんなに弱い者でも感じられるオーラが。
だがこの少女からはオーラとは別に何か異質な感覚をビシビシと感じるのだ。
ヒソカの第六感がこの少女には何かとてつもない力が眠っていると囁いている。
「ソカ?」
「クククッ!ボクはヒソカだよ ほら、言ってごらん?」
「…ヒ…、ソカ?」
「うん、合格 キミは優秀だね◆」
よくできました、と言ってヒソカがポンポンとルイの頭を撫でると彼女は屈託のない笑顔を浮かべて微笑んだ。それはもう、その微笑み一つで国を傾けられるのではないかと思うほど美しい表情で。
「(ああっ…キミのおかげで興奮しちゃったじゃないか★)」
ゾクゾクと全身を駆け巡る高ぶりに不覚にも下半身が興奮してしまったのを涼しい顔でなかったことにし、ヒソカはルイを抱えたまま闇夜に消えていった。
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