ジェルマ姫の日常(inジェルマ王国)
 
「レイジュおねーさま!今日ね、私料理長と一緒にクッキーを作ったの!だからね、おねーさまに食べてほしくて来たの」


レイジュが自室で椅子に座りながら本を読んでいる時、突然ルイはやって来た。手にトレーを持ちながらにこにことそう話す可愛い末の妹にレイジュは読みかけの本を伏せてニコッと笑みを浮かべた。


「あら 今日はクッキーを作ったのね?美味しそう」

「うん!レイジュおねーさまとおにーさま達にもあげようと思っていっぱいつくったの!」

「ルイは相変わらず可愛くていい子ね じゃあ1つもらおうかしら」

うん!あのね、レイジュおねーさまにはこれ!といって差し出してきたものを手に取る。見てみればなんとも可愛らしい事に、とても上手とは言い難いが、かろうじてレイジュの姿を象っているクッキーを渡されたのだ。

「まァ…これは私ね?嬉しいわルイ 食べるのがもったいなくなっちゃう」

「えへへ、おねーさまに喜んでほしくて作ったの!また食べたかったら作るから食べてね?」

「ええ、それならありがたく頂くわ」

サクッとクッキーを食べるレイジュを目の前で観察しながらワクワクといった表情を抑えられないルイは、キラキラと目を輝かせながらレイジュの感想を待った。


「驚いた とっても美味しく出来てるのね。将来は私専属のパティシエにでもなって欲しいくらいだわ」

「ほんと!?おいしかったなら嬉しい!いいよ、おねーさまが食べたいなら私、いつでも作るから!」

「うふふ!それは嬉しいわ。こんなに美味しいクッキーならイチジ達もきっと喜ぶわよ」


「そうかな?えへへへ じゃあおにーさま達にも渡してくるね!あ、おねーさまにはもう一個あげる!」

「あら嬉しい。ありがとう 走って転ばないように気をつけてね」

「うん!今度は違うお菓子も作ってくるから楽しみにしててね」


トレーを片手にブンブンと手を振るルイにレイジュも笑顔で手を振り返す。やがて見えなくなった可愛い妹の姿を確認して、もらったクッキーに視線を落とした。

以前、妹のように料理を作ることが好きだった弟がいた。その弟に似てルイは自分たちとは違い心の優しい女の子だ。


これといって秀でて何かが出来るわけではないのに、父ジャッジも、弟達もこぞって彼女をとても可愛がっている。
当然レイジュ本人もルイをとても可愛がっていた。

ルイは確かにとても愛らしい容姿をしてはいるがそれだけの理由であそこまで可愛がるのには少々不審な点が多く残る。父だけならまだしも、弟達までもが可愛がっているからだ。感情を持ち合わせていない弟達が、だ。

恐らく遺伝子を操作する時に何か誤って操作してしまったのかもしれない。家族に出来損ないと罵られここから出て行ったサンジには申し訳ないが、なんの才もない妹が彼と同じ目に合わなくてよかったと思ってる。

いつかルイが弟達の心を取り戻してくれたら、なんてあり得もしない夢物語を思い描きながらレイジュはもらったクッキーを再び食べるのだった。


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「あ!おにーさま達みーつけた!」

「おお!ルイじゃねェか ん?その手に持ってんのは何だ?」

「ヨンジおにーさま!ふふふ!実はね、私おにーさま達のためにクッキーを作ってきたの!だから食べてほしくて」

「へェ?ルイにしちゃウマそうじゃねェか」

「美味いに決まっているだろう ルイがおれ達の為に作ったんだ」


たまたま広間に集まっていた三人の兄達を見つけたルイが走り寄って行く。


まずはヨンジにがしがしと頭を撫でられ、早速ニジがクッキーに手を伸ばし、イチジが食べてもない妹のクッキーを賞賛する。
これは感情を抜き取られた彼らにはありえない行動だった。


本来であれば、王族が奉仕などするなと言われる場面だ。ここを出ていったサンジは父ジャッジにそう言われていた。兄弟達にもそうだ。また料理なんか作ってるとバカにされていたが、ルイにはそんな言葉は一言も発さない。


「あのね、ニジおにーさまにはこれで、イチジおにーさまにはこれ。ヨンジおにーさまにはこれなの!」

一人ずつ彼らの形を象ったクッキーを手に乗せて渡せば彼らはそれを見て機嫌をよくした。

「これはおれか?」

「うん!イチジおにーさまだよ」

「そうか。よくできているな 流石おれ達の妹だ」

「へへへ ありがとう!」

「中々うめェな ルイ!次もまた食べてやってもいいぞ」

「ほんと?じゃあ今度はもっと美味しくなるようにニジおにーさまの好きなチョコ掛けクッキーを作るね!」

美味しそうに食べてくれるニジにニコニコと笑ってそう答える。

「ウマい!あの出来損ないが作るモンとは大違いだな」

「ハハハ!違いねェ」

「あいつの話はやめろ せっかくのクッキーが不味くなるだろう」

「あァそれもそうか」

イチジにそう言われ納得するニジとヨンジ。イチジは腰を折ってルイと視線を合わせた。

「あんな出来損ないと比べて悪かったなルイ」

「え?ううん…!気にしてないから心配しないで?」

突然始まった今はもういないサンジの悪口を言う兄達に引っ掛かりを覚えつつもルイは特にその話には深入りはしなかった。

いつか、そのサンジおにーさまに会ってみたい。でもそんな事はとても兄達には言えないので、いつか自分で一人歩きが出来るようになった時、会えたらいいなという思いを胸に兄達と一緒に自分の焼いたクッキーを食べるのだった。

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