02
あれがあったのは一週間前。
その日からふと気がついた時にあのワンピースの女が現れる。
窓の外、体育館のステージ、鏡の向こう。
気持ち悪いし恐ろしい。赤ちんたちには見えていないようだった。
こわい、怖い、恐い、コワイ。
時々、自分が自分ではなくなるような感覚がある。そんな時は決まってあの女が視界に入った直後だった。
「なぁ、うるさいんだけと」
急に隣の席の柳瀬星弥が話しかけてきた。
唐突な暴言に言葉が詰まる。なぜ話したこともない奴にうるさいなどと言われなければならないんだろう。
ましてや俺は何も喋っていない、うるさいと注意されるいわれはないのだ。
「はぁ?うるさいって、俺なんもいってねーじゃん」
「お前じゃねぇし、その後ろの奴」
後ろの奴、彼女はたしかにそう言った。
後ろといっても俺の席は一番後ろだし今は授業中だから、後ろには誰もいない。
「ずっと”ぽぽぽぽ”言ってんだけど、やたらでかいし」
「え…………」
「ぽぽぽぽ」という音、大きい女。
一週間前に追いかけられたあいつしか思い浮かばなかった。
何でわかったのだろうか?俺は誰にも話していないというのに。
「まぁいいや、私には関係ないし」
そう静かに響いた声はどこか冷たさをはらんでいた。
〜
部活の時間になってもアイツの言ったことが気になっていた。
柳瀬星弥、彼女は口が悪く友人がいないようだった。
授業中は居眠りをし、成績は下の上。
そんな彼女がなぜ俺に起こったことがわかったのか、なぜ後ろにあの女がいるなんて言ったのか。
「大丈夫っスか?紫っち顔色悪いっスけど」
「ほんとだ、むっくん大丈夫?」
「………うん」
「紫原、無理をするな、今日は帰れ」
いやだ、一人で帰りたくない。
今日はとても嫌な予感がするのだ。
「……わかった」
口が勝手にそう言っていた。
体も言う事を聞かない。
勝手に動く身体、勝手にしゃべる口。
とてつもない恐怖に襲われる。
赤ちん、黄瀬ちん、峰ちん、黒ちん、みどちん、桃ちん─────────
────────助けて
2014.11.09 完成
2016.06.16 加筆修正
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