閑話休題



「星弥ちん、おはよ〜」

「え?星弥ちん?お、おはよう?」

「え〜?なんで疑問系?」

「なんでって、突然話しかけてきたから……。そっちこそなんで」

「昨日助けてくれたし、仲良くなりたいから〜」



素直に気持ちを伝えると、狼狽えているのが手に取るようにわかった。
どうやら考えている事が顔に出やすいようで、今までクールな一匹狼を気取ったやつかと思っていたがそうでもないらしい。



「お礼にお菓子いっぱいもってきたんだけど」

「いる!!!」



そして、普通の女子よりちょっと食い意地が張っている。ちょっと?いや、ちょっと所ではないかもしれない。
現にお菓子を鞄から出している最中、ギラついた目でお菓子を眺めていた。



「おいしいね〜」

「ん、うま」



口いっぱいにお菓子を頬張る姿は普通に可愛いらしく、昨日あの化物に毅然とした態度で立ち向かっていた姿とはかけ離れていた。



「紫っちと柳瀬さんは何食べてるんすかー?」

「うげっ、」



黄瀬ちんが俺達に話しかけると、星弥ちんは苦々しい顔をしてどこかへ行ってしまった。



「あー!星弥ちんどっかいっちゃったんだけど!」

「何スかあれ!感じ悪いっスね!」

「も〜、黄瀬ちんのせいだ、ばか、あほ、駄犬。俺星弥ちん追いかけてくるし」

「駄犬!?ってか俺のせい!?」





追いかけてきたはいいが、彼女が何処にいるのかがわからない。
しばらく適当に校舎をぶらついていると、廊下にある物が落ちているのが目に入った。



「ん?何これ……」



どこにでも売っていそうなぬいぐるみのキーホルダー。
落しものだろうか、俺は拾おうとしたが手が触れる直前声がかかった。



「拾うな、触るな」

「星弥ちん?」

「ソレ……触ったら憑かれてたかもしんないぞ」



危なかった、そんな危険な物だったのか。
星弥ちんには昨日から助けられてばかりだ。



「そういえば、なんでさ黄瀬ちん来た時どっか行っちゃったの?」

「キセ?あの黄色いの?アイツ、後ろに女いっぱい憑いてんだよ、面倒臭い」



ゾッとした。黄瀬ちんらしいっちゃらしいが、昨日あんな思いをした俺からすると笑えない。



「それって大丈夫なの?」

「アイツのこと好きなだけだし……多分」

「そっかー、じゃあさっきのは何?」

「ああ、あのぬいぐるみ?私もよくわかんない、いいものではないよ。思い出や恨みのこもったもんだと思う」



思い出や、恨みか。つくづく人は恐ろしい。
そういえば、昨日のアレはなんだったのだろうか。



「ねぇ、昨日のって」

「え、知らないの?八尺様だよ。アンタ、八尺様に魅入られたの」

「そうなんだ……こわ」



魅入られたとか全然嬉しくない。
八尺様は都市伝説として聞いたことあるけど実際俺の身にそんなことが起こるなんて思ってもみなかった。



「そういえばなんでさっき助けてくれたの?」

「友達の心配くらいするし、普通」

「え、俺ら友達?」

「なに?さっき仲良くって言ってたじゃん。友達じゃ嫌なワケ?」



そう言ってちょっと泣きそうな顔をする。
何だこの可愛い生き物、捨てられた仔猫を彷彿とさせる。



「そんなことないよ。俺ら友達、むしろ親友!」

「……おう、ありがと。私、馬鹿だけど心霊方面は頼りにしてくれていいから。友達のことは絶対守るから」



何だ、このイケメン。
スパダリ感がハンパないではないか。
あやうくトゥンクしかけた、危ない危ない。俺はそんな乙女なキャラじゃないんだ。



「さっきの………」

「?」

「仲良くしたいって言ってくれたの嬉しかった。私コミュ障だから人と話すの苦手だし、友達とかあんまいないからどうしたらいいのかわかんないけど仲良くしてくれたら嬉しい」

「そっか、よろしくね星弥ちん」



俺はなんかイケメンな天使と友達、否親友になってしまったようだ。





2014.11.10 完成
2016.06.16 加筆修正


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