1年-03
松野兄弟のお目付役に選ばれた同じ小学、中学の同級生たちはその精神的負荷からか、かつてより確実に仲良くなっていた。学校行事やら何やらがあると一緒に固まるぐらいには。
えっ?名称が違う?松野係?ちょっと身に覚えがありませんね。
「やったー!やった!他のクラスのお目付役もいる!俺だけで対応しなくて済む!」
「えええ…」
「自分だけで同じクラスの松野を対応しなくて済むのは確かだけど、それだと他のクラスの松野の対応もすることになるよ…」
今日は学校によってはガチ行事になる球技大会だ。全校生徒参加のため、他の学年やクラスの生徒との交流を深める行事である。
他のクラスの生徒、そう、自分のクラスではない松野兄弟を見ることができる。視覚的なのか世話的なのかは聞かないで欲しい。
「で、正直なところどうよ。お前らのクラス」
「精神的に疲れる」
「精神的に疲れる」
「精神的に疲れる」
「精神的に疲れる」
「物理的に疲れる」
「あ、俺のところそうでもない」
トド松のクラスのお目付役には、他のクラスのお目付役から全力の肩パンをお見舞いすることにした。
顔はやめてボディにしな!などと言いながら一人を取り囲んで肩パンする光景はさぞかし異様だと思うが、我々は至って真面目なのである。
「いいなあ〜いいなあ〜!俺はもう振り回されたくない…物理的に」
「えっ、あれマジだったのか…」
「私の中の十四松はそんなことしないイメージだったんだけど…」
「そうなんだよ!聞いてくれる!?それがさー…あっ」
会話の途中で声をあげた十四松のお目付役の視線を皆で追う。そこにはほぼ毎日見ている同じクラスの松野と同じ顔の松野が、やたら元気に木製バットを素振りしていた。
瞬時に自分のクラスの松野ではないと判断する我々。瞬時に顔色を悪くする十四松担当。
「あーー!待って待って!お前サッカーでしょ!野球じゃない!野球じゃない!!」
嫌だの何だのと言っていた割に、十四松のクラスのお目付役の動きは速かった。将来あいつは社畜になる気がする。そいつは叫びながら十四松に駆け寄り、大袈裟なほどの身振り手振りで何かを説明していた。十四松は外国人か何かか。
遠目からその様子を見ていた私たちだったが、他の松野が十四松たちの方へ向かっているのを視界に入れた。
一瞬のうちに行われるアイコンタクト。
「…さーてと!俺らも移動するか!」
「そうだね!自分たちの試合に間に合わなかったら困るもんね!」
「私体育館行かなきゃ!」
「よっしゃあ!頑張ろうぜ!」
「じゃあまた後でねー!」
自分一人で担当である松野兄弟の対応をしなくてもいいと言ったな、あれは嘘だ。
背後から聞こえる「薄情者!」という声を聞きながら、私たちは走り出した。
俺たちの戦い(球技大会だと思いたい)はこれからだ!
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